キャンパスクリエイト(広域 TLO)は、25 年以上にわたり大学の研究成果(シーズ)を社会へ届ける技術移転活動を推進してきました。特に、研究段階からユーザー・顧客ニーズを的確に把握し、実証を通じて実用化につなげる取り組みを重視しています。こうしたニーズ・シーズ連携の知見や、プロジェクト伴走のノウハウ、そして海外協力機関とのネットワークを活かし、当社は日本企業の海外展開を後押しする新たな支援モデルの構築にも取り組んでいます。
上記の活動の一環として、2026 年 5 月、日本発医療・ヘルステックスタートアップの ASEAN 展開を支援する海外展開支援プログラム第 2 弾をシンガポールにて実施しました。本プログラムでは、シンガポール最大級のヘルステックイベント「HealthTechX Asia 2026」への出展支援に加え、参加企業ごとの事業課題や海外展開フェーズに応じて、医療機関、投資家、規制・薬事専門家、事業会社との個別商談を設計するオーダーメイド型のハンズオン支援を実施しました。
前回 2025 年8月~1月に実施したプログラムで構築した現地ネットワークを活用しながら、新たな医療機関・スタートアップ支援機関・投資家との接点が拡大し、弊社としても各分野に強みをもつ専門家との提携関係などを通じ、日本発ヘルステックスタートアップの海外展開支援体制を強化する重要な機会となりました。
【参加企業の目的と主な成果】
企業名 /ACCELstars 株式会社(東京大学発スタートアップ)
参加目的/シンガポール・ASEAN 地域での事業展開を目的とした展示会出展、臨床評価先の探索、薬事戦略の検討
主な成果/
・私立睡眠クリニックとの戦略的 MOU 締結
・現地公立病院睡眠センターとの臨床 PoCに向けた協議を開始
・データ評価・共同研究・アジア展開に向けた協力体制を構築
・HSA 申請に向けた薬事戦略を具体化
企業名 /SMILECURVE株式会社
参加目的/側弯症スクリーニング技術の海外展開、病院 PoC 機会の探索、薬事戦略の検討
主な成果/
・HSA 申請に向けた薬事戦略を具体化
・臨床 PoC 成果を基盤としたシンガポール、ASEAN 展開の方向性を整理
企業名 /株式会社 SOXAI ASEAN
参加目的/ASEAN市場における事業機会の探索、事業提携先の開拓、投資家との接点形成
主な成果/
・シンガポールの Longevity(健康寿命延伸)政策領域における市場ニーズを把握
・投資家・VC との面談を実施し、資金調達に向けた協議を継続
・販売代理店候補および睡眠関連事業を展開する大手企業との関係構築
【プログラム概要】
本プログラムは以下の 2 つの支援内容で構成、実施いたしました。
① 展示会出展支援
参加企業
ACCELstars 社:睡眠 AI ソリューションを開発する東京大学発スタートアップ
主な支援内容
・HealthTechX Asia 2026 出展に関する事前準備
・ブースでの製品説明、運営支援
・会場でのネットワーキング支援
・リード獲得後のフォローアップ
・協業候補先医療機関との個別商談設定
② ハンズオン支援プログラム(参加企業 2 社)
参加企業
株式会社 SMILE CURVE:思春期性側弯症スクリーニングツールの開発
株式会社 SOXAI:睡眠・活動量・バイタルデータを計測し、健康管理を支援するスマートリングを開発するヘルステックスタートアップ
主な支援内容
各企業の事業内容や課題に応じた、訪問先、個別商談先のコーディネート
商談後のアフターフォロー、連携体制構築支援
(医療機関、規制・薬事専門家、投資家、事業会社、スタートアップ支援機関等)
主な行程
内容 /月日/ 概要
①展示会出展支援
5月5日 私立睡眠クリニックとの MOU 締結および臨床評価に関する協議
5月6日 HealthTechX Asia 2026 出展/ネットワーキング
5月7日 HealthTechX Asia 2026 出展
5月8日 公立病院睡眠センター/イノベーションオフィス 訪問
②ハンズオン支援
5月11日 Origgin Ventures 訪問、薬事戦略コンサルタントとの個別面談、投資家との個別面談
5月12日 医療クラスターイノベーションオフィス訪問
・SingHealth ALICE
・NHG Health Co11ab
・Active Aging Center 訪問
・VC との個別面談
5月13日 公立病院との個別面談、ACE訪問、INVIA Solutions 訪問
「出会いをつくる」だけでなく、「事業につなげる」海外展開支援 ― 大学発スタートアップの事業化を支える広域 TLO ならではのオーダーメイド支援 ―
【私たちが目指しているのは、「紹介する支援」ではなく、「一緒に交渉し、一緒に走る支援」です】
キャンパスクリエイトの支援は、展示会出展やネットワーキングの機会提供だけを目的としたものではありません。大学発スタートアップやディープテック企業の海外展開では、有望なパートナーや顧客候補と出会うことはおおきな第一歩ですが、さらに重要なのは、その出会いや情報をどのように整理し、実証、事業提携、薬事戦略、資金調達へと発展させ、事業成長につなげていくかであると考えています。
キャンパスクリエイトは、25 年以上にわたり研究成果の社会実装を支援してきた広域 TLO として、シーズとニーズ、研究と事業をつなぐ橋渡し役を担ってきました。その経験を活かし、事前ヒアリングを通じて各社の課題や目的を理解した上で、各パートナーとの商談機会を個別に設計しています。また、商談機会を提供して終わりではなく、面談への同席、現地での交渉支援、次のアクションの整理、事業戦略の検討まで含めて伴走することを目指しています。
今回のプログラムでも、参加企業ごとに異なる目的に応じて商談先をコーディネートし、MOU 締結、PoC 創出、薬事戦略構築、投資家との継続協議など、それぞれの次の事業ステップにつながる成果を創出することが出来ました。キャンパスクリエイトは今後も、大学発スタートアップやディープテック企業が海外市場で事業を成長させるためのパートナーとして、出会いの創出から事業戦略の構築、実証・事業化までを一貫した支援体制をより一層強化していきます。
≪参加企業の声≫
シンガポールでは現地で信頼できる方々と出会い、共に事業を創っていける可能性を強く感じました。
キャンパスクリエイトの伴走により、現地の仕組みや連携すべきパートナーが明確になり、社会実装からアジア展開まで実現できる手応えを得ました。
【シンガポールは ASEAN 展開の実証フィールド ― テック系スタートアップに広がる事業機会】
今回の活動を通じて改めて実感したのは、シンガポールが単なる一国市場ではなく、ASEAN 市場への展開を見据えた「実証・事業化ハブ」として機能していることです。
その象徴ともいえるのが、今回参加した HealthTechX Asia 2026 です。HealthTechX Asia は、病院、行政機関、規制当局、投資家、スタートアップ、テクノロジー企業が一堂に会するアジア有数のヘルステックイベントであり、2026 年は 2 回目の開催ながら 1,000 名を超える参加者が集まりました。参加者の半数以上を病院や医療機関の意思決定に関与するマネジメント層が占めており、単なる展示会ではなく、医療システムの変革を担うプレイヤーが集う実践的な場となっています。
会期中の講演やパネルディスカッションでは、AI 活用、医療データ連携、相互運用性
(Interoperability)、デジタル治療、高齢者ケア、在宅医療などが主要テーマとして取り上げられていました。特に印象的だったのは、シンガポールが国家レベルで「治療中心の医療」から「予防・健康寿命延伸中心の医療」への転換を進めていることです。保健省関係者や医療機関からは、睡眠、運動、生活習慣改善、フレイル予防などを支えるデジタルヘルス技術への期待が繰り返し示されていました。
実際に今回参加した企業も、病院関係者や医療 DX 担当者との対話を通じて、睡眠データを活用した予防医療、高齢者の健康モニタリング、AI を活用した医療支援などの領域において具体的なニーズを確認することができました。また、システム導入に向けた評価プロセスや PoC 実施の考え方など、日本市場とは異なる意思決定プロセスについても理解を深めることができました。
さらに、シンガポールには ASEAN 各国の医療機関、投資家、事業会社が集積しており、ここでの実証実績や導入事例は、マレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムなど周辺国への展開においても大きな信頼獲得につながります。大学発スタートアップやディープテック企業にとって、シンガポールは「まず海外で実証する場所」であると同時に、「ASEAN 市場へ展開するための足掛かり」となる重要な市場であり、今後も大きな事業機会が期待されます。
【今後について】
今回参加したスタートアップ各社に対しては、現地で構築した医療機関、投資家、事業会社等とのネットワークを活用し、引き続き実証機会の創出や事業開発に向けた伴走支援を行ってまいります。また、2026年5月にはシンガポールのVC兼アクセラレーターであるOriggin VenturesとMOUを締結し、大学・研究機関ネットワークとグローバルな投資・事業開発ネットワークを活用したテックスカウティングおよび海外展開支援体制を強化しました。
今後もシンガポールをはじめとする海外ネットワークを活用し、日本発スタートアップの実証機会創出と事業開発を支援するとともに、優れた技術・研究成果のグローバル展開を推進してまいります。
PFAS測定結果の信頼性の高いデータ解析共通基盤の構築と、「測る」から「判断する」までを支える標準化を目指す
株式会社キャンパスクリエイトが事務局を務めるPFAS対策技術コンソーシアムは、トヨタ自動車株式会社が開発するデータ解析基盤「WAVEBASE」を活用したPFAS測定技術に関する協業プロジェクトを開始します。
本プロジェクトでは、PFAS測定結果の信頼性の高いデータ解析について様々な業種で使用できる共通基盤の構築を目指すとともに、WAVEBASEをPFAS分析のためのデジタル基盤として展開し、PFAS対策の効率化・高度化と社会実装を目指します。
本取り組みの背景には、PFAS測定技術の高度化に向けた技術進展があります(Jiao et. al., nature communications / Yu et. al., nature machine intelligence 2025)。人工知能、オープンデータベース、国際標準分析法ISO21675を高度に融合することで、製品や環境試料中に存在する未知のPFASの把握・特定を支援する技術の開発が急速に進みつつあります。これにより、従来のように限られた個別化合物を対象とした測定・管理に加え、より包括的で実態に即したPFAS評価・管理の実現が期待されています。
また、PFASを利用する企業やメーカーが、自社製品の製造・流通に伴うPFAS由来の環境負荷について、自主管理を進めるための基盤技術としての活用も見込まれています。
今回の協業プロジェクトでは、株式会社キャンパスクリエイトの広域TLOとしての実績をもとに、産業界、学協会、分析機器メーカーなどの連携も視野に入れ、特徴量解析とPFAS分析に特化した機械学習アプリケーションの開発や、実務に基づく事例開発を進めていきます。これにより、PFAS分析における“デジタル標準(DX)”の早期確立を目指し、PFAS分析の「測る」から「判断する」までを支える仕組みづくりを推進し、国内PFAS対策の効率化・高度化と社会実装を目指します。
WAVEBASEについて
WAVEBASEは、トヨタ自動車株式会社が開発したクラウド型のデータ解析基盤であり、材料開発や分析分野におけるデータ活用を支援するマテリアルズ・インフォマティクス(MI)プラットフォームです。実験・計測データの前処理から特徴量抽出、統計モデルの構築、結果の可視化、さらには次の実験条件の提案までを一気通貫で実行でき、少量データからでも有効な知見を引き出すことが可能です。
トヨタが長年にわたり蓄積してきた材料研究開発の知見とAI・機械学習技術を融合しており、専門的なデータサイエンスの知識がなくても直感的に活用できる点を特徴としています。これにより、従来は属人的であった解析業務の標準化および再現性の向上を実現し、データに基づく意思決定を支援します。
本プロジェクトでは、このWAVEBASEをPFAS分析に応用することで、分析データの構造化・共有・高度解析を可能とし、PFAS分析プロセスの効率化と高度化、さらには分析結果に基づく判断支援の基盤として活用していきます。
PFAS対策技術コンソーシアムについて
PFAS対策技術コンソーシアムは、国立研究開発法人産業技術総合研究所にて培われた技術シーズと海外の最新研究成果を国内産業界・地方自治体等に普及させ、国内PFAS対策(計測・処理)技術の底上げを行うことを目的に、2021年6月21日に国立研究開発法人産業技術総合研究所 山下信義上級主任研究員を会長として設立し、2025年3月31日まで活動しました。
産業界からの継続ニーズを受け、2025年4月より株式会社キャンパスクリエイトが事務局を担い、新体制にて活動を継続しています。
PFAS対策技術コンソーシアムHP:https://www.campuscreate.com/pfas-office/
問い合わせ先
PFAS対策技術コンソーシアム事務局(株式会社キャンパスクリエイト)
E-mail:pfas.info@campuscreate.com
当社の産学連携支援により実施された、株式会社コアミックスと東京大学大学院総合文化研究科 酒井邦嘉教授の研究チームとの共同研究における成果が公表されました。
詳細はこちらをご覧ください
出典・参考:東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部 ニュース(掲出:2026年6月4日)
▶https://www.c.u-tokyo.ac.jp/info/news/topics/20260604030000.html
【発表のポイント】
- 心情理解を要するマンガを紙の本と電子書籍で読んだ後に脳活動を調べたところ、前者のほうが読書時と問題解答時の両方で、脳活動の省エネ化をもたらすことが分かりました。
- 短時間の読書であっても、その後の知的な機能を支える脳活動に大きな影響を与えることが明らかとなり、これは紙の本の読書効果を脳科学で実証した初めての研究成果です。
- 社会的に文書の電子化が進み、デジタル教科書の導入が検討される中で、電子書籍を上回る紙の本の有効性が脳科学によって明らかとなった意義は大きいと言えます。
【概要】
東京大学大学院総合文化研究科の酒井邦嘉 教授の研究チーム(助教 梅島 奎立氏、修士課程大学院生 砂田 裕貴氏)は、株式会社コアミックスとの共同研究において、紙の本のほうが電子書籍より脳活動の省エネ化を引き起こすことを初めて明らかにしました。
なお、「省エネ化」とは脳の余分な活動を抑えることを意味し、効率化や利便性などとは関係ありません。また、脳活動の上昇を「脳の活性化」と呼んで評価したり、活性化を促すことを「脳によい」と言われたりしますが、そうした表面的な表現は科学的な適切さを欠きます。
本研究ではMRI装置(注1)を用いたfMRI(機能的磁気共鳴画像法)(注2)を使うことで、紙のマンガ本の読書後に生じた省エネ化を示す脳活動を世界で初めて計測しました。行動観察に基づく先行研究と比較して、脳活動の直接的な計測という点で新規性があり、この研究成果は今後、知的活動や教育における紙の価値の再認識に役立つことが期待されます。
【発表者・研究者等情報】
東京大学大学院総合文化研究科
酒井 邦嘉 教授
梅島 奎立 助教
砂田 裕貴 修士課程大学院生
株式会社コアミックス
堀江 信彦 代表取締役社長
当社は、今後も、様々なかたちでオープンイノベーションの支援を行ってまいります。
当社、事業内容はこちらをご覧ください。
▶https://www.campuscreate.com/business/