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大学の技術・ノウハウ

パラジウム蓄積能を高めたゲノム編集大腸菌

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パラジウム蓄積能を高めたゲノム編集大腸菌

組織名 法政大学 生命科学部生命機能学科 教授 山本兼由
技術分野 新エネルギー/省エネルギー , 環境/有機化学/無機化学
概要

パラジウムは自動車産業や電子機器産業などでの需要が急増している有用な工業材料である一方で、鉱物中に高濃度で存在することが稀であり、採掘が難しい材料です。本技術は、研究室独自に開発したマーカー遺伝子が不要なゲノム編集法(HoSeI法)により、パラジウム蓄積能を高めたゲノム編集大腸菌を単離し、ppmオーダー以下でパラジウムを含有する環境の希薄な未利用パラジウムをゲノム編集大腸菌に蓄積させることで資源化することを目指しています。

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【簡略図】

多重遺伝子変異導入を可能にしたゲノム編集技術
HoSeI
(Homologous Sequence Integration)法

【背景】

パラジウムは自動車産業や電子機器産業などでの需要が急増している有用な工業材料として経済産業上、もっとも重要なレアメタルです。その原料は、パラジウムをppmオーダーで含有する鉱物から生産する方法か、もしくは使用済製品からのリサイクルから回収する方法です。鉱物は、国内供給の70%超がロシアと南アフリカからの輸入であり、またもっとも需要が多い燃料自動車用排ガス触媒からの使用済み廃棄物のリサイクル率も数%しかなく、原料供給について根本的な課題を抱えている状況です。

本研究は、ppmオーダーでパラジウム含有する鉱物(第1世代)やパラジウム含有使用済製品(第2世代)以外にも、パラジウムは淡水など、ppmオーダー以下で含有する資源環境に着目し、これら希薄な資源環境からの未利用パラジウムの資源化(第3世代)を目指しています。

【技術内容】

微生物を構成する元素は、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、リン、硫黄、塩素、セレン、臭素、ヨウ素の非金属元素、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、テルルの半金属元素に加え、ウランなどの27種類の金属です。

今回、大腸菌を構成する元素としてパラジウムを含む4種類の白金族金属を発見し、大腸菌細胞のパラジウム恒常性に関わる遺伝子の探索および大腸菌ゲノム上の多重な改変を可能とするゲノム編集HoSeI(Homologous Sequence Integration)法による開発を行い、パラジウム含有量が向上したゲノム編集大腸菌を単離しました。

図1:HoSeI法で編集した大腸菌とその特徴

このゲノム編集大腸菌を、合成培地M9培地(0.06 W/V % NaHPO4、0.03 W/V % KH2PO4、0.005 W/V % NaCl、0.01 W/V % NH4Cl、0.0095 W/V % MgCl2、0.0011 W/V % CaCl2、0.2 W/V % グルコース)で培養した結果、増殖した大腸菌細胞内のパラジウム量は数 ppmという結果となりました。これは、検出限界以下のパラジウム含有溶液を培地として、パラジウムをppmオーダーで濃縮したゲノム編集大腸菌の細胞が得られることを示しています。(図1)

図2:ゲノム編集大腸菌細胞内の白金族含有量

さらに、ICP-MSを用いパラジウム高蓄積ゲノム編集大腸菌細胞内の白金族含有量を測定した結果、イリジウムとオスミウムは検出限界値以下でしたが、ロジウムは数 ppb、ルテニウムは数ppb、白金は数ppbであり、パラジウム濃度が白金族の中で最も高く、他の白金族元素の1,000倍以上でした。(図2)
この結果は、鉱物や使用済製品などの都市鉱山と比較しても、パラジウム高蓄積ゲノム編集大腸菌が、同等の新しいタイプのパラジウム資源と考えられます。
第3世代のパラジウム資源として活用できる可能性が期待できます。
【関連特許】
白金族金属を蓄積する微生物(特願2022-565316)

 【技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)】

・大腸菌ゲノムの複数箇所を改変するゲノム編集HoSeI法を開発しました。
・鉱物と同等にppmオーダーでパラジウムを含有するゲノム編集大腸菌の単離に成功しました。
・合成培地に含まれる希薄なパラジウムをゲノム編集大腸菌細胞内に濃縮できました。
・ゲノム編集大腸菌細胞は、鉱物と比較して、白金族金属のうち、パラジウム含有率を特異的に含有する能力を保有しています。

【連携企業のイメージ】

・金属資源の開発や調達、高い純度のパラジウム獲得を希望されている企業
・微生物の連続大量培養技術を保有している企業
・希薄なパラジウム含有廃液を活用したい企業
・希薄なパラジウムを除去したい企業

【技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)】

・海水や淡水など未利用パラジウム環境からのパラジウム濃縮および回収。
・ゲノム編集大腸菌細胞から単離する高い純度のパラジウムの利活用。
・大腸菌バイオプロセスに基づくゲノムデザインによる金属資源技術基盤の提供。

【技術・ノウハウの活用の流れ】

本研究にご興味があればお気軽にお問合せください。
詳しい研究紹介を含め、連携に向けご面談等のアレンジが可能です。

【専門用語の解説】

ppm:parts per millionの略。1,000,000分の1を表します。
ppb:parts per billionの略。1,000,000,000分の1を表します。

白金族金属:元素のうち、周期表の第5・6周期で第8・9・10族に位置するもの。ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金の6種類の元素の総称。

ゲノム編集:ゲノム上の特定な場所の塩基配列を改変する技術。技術は「ゲノム切断」と「DNA配列の改変」に大別される。すなわち、ゲノム上の特定な場所を切断し、その切断された場所において塩基配列の改変を行うこと。

合成培地:無機塩、金属塩、グルコースなど純粋な試薬を使って調製する培地のこと。主に微生物の増殖で用いられる。

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