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白金と同等の効率が期待できる新規代替触媒

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白金と同等の効率が期待できる新規代替触媒

組織名 東洋大学 工業技術研究所 和田 昇 客員研究員
技術分野 新エネルギー/省エネルギー , 環境/有機化学/無機化学
概要

 世界的に脱炭素への取り組みが進んでいる中、重要度を増している水素エネルギーの製造や燃料電池の開発ですが、現状はコスト高と耐久性が課題となり、広く普及できていません。コスト高の1番の要因となっているのが、触媒に白金(プラチナ)を使用している点です。

 本技術は、ハロゲン置換C12A7(マイエナイト:12CaO・7Al2O3) というセメント鉱物の触媒性能に着目し、燃料電池の白金代替触媒としてマイエナイトC12A7(12CaO・7Al2O3) に含まれるO2-カチオンアニオンをハロゲン元素で置換した触媒用組成物及びそのエレクトライド化(内包アニオンを電子で置き換える)された触媒としての組成物の生成方法を確立し、条件によっては白金同等の触媒性能を発揮することを確認しました。

 本触媒は、他の白金代替触媒に比べ、生成コストや化学的安定性で優れています。また、耐久性も実証されているため、実用化へ向け期待できます。本触媒を利用することにより安価な燃料電池が製造できれば、今のリチウムイオン電池にとってかわる存在となる可能性があります。さらに、白金代替触媒の為、浄化システムや石油精製プロセスやアンモニアの製造、医療分野やセンサー応用への期待もできます。

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【簡略図】

図1:マイエナイト結晶基本格子構造
マイエナイトは単位胞に12個の直径~4 nmの“籠”(以後ケージと呼ぶ)を持つ多孔質結晶で、ケージ内に内包されている酸素イオン(O2-)を他の陰イオンや電子と置き換えることができます。
図2:C12A7のハロゲン置換・エレクトライド化
C12A7は、例えば酸化カルシウムとアルミナを規定のモル比で混ぜ、約1350℃で焼成することで得られます。フッ素置換はCaF2パウダーとC12A7と共に800℃で焼成が行われ、エレクトライド化はCa金属と共に真空下700~800℃で熱することによって行われます。
図3:塩素置換C12A7エレクトライド-白金MEAと白金-白金MEAの電気出力比較
ほぼ同様の条件で出力を時間経過と共に観測をしました。青色のデータポイントはアノードをC12A7:Cl-エレクトライド、カソードを白金触媒として使用したMEA、赤色、紫色データは白金-白金からなる(異なる)MEAを使用しています。

【背景】

 白金は触媒として、さまざまな産業や分野で幅広く使用されています。自動車の排気ガス浄化システムや化学反応の促進や特定の物質の生成への利用、医療分野やセンサー応用にも期待されていますが、世界的に脱炭素への取り組みが進んでいる中、特に燃料電池における酸素還元反応に使用されています。
 一方で、白金は希少でかつ高価であるため、白金代替触媒で生成法が簡単で低廉な物質が望まれ、現在、白金代替の技術開発として鉄フタロシアニン、含窒素カーボン(カーボンアロイ)等が注目されているが、コストや化学的安定性という点で白金には及ぶものは出てきていません。

 そこで、 本技術はハロゲン置換C12A7(マイエナイト:12CaO・7Al2O3) というセメント鉱物の触媒性能に着目し、燃料電池の白金代替触媒としてマイエナイトC12A7(12CaO・7Al2O3) に含まれるO2-カチオンアニオンをハロゲン元素で置換した触媒用組成物及びそのエレクトライド化(内包アニオンを電子で置き換える)された触媒としての組成物の生成方法を確立し、条件によっては白金同等の触媒性能を発揮することを確認しました。

【技術内容】

◎触媒として安価で簡易な生成方法
マイエナイトは、単位胞に12個の直径~0.4nmの“籠”(以後ケージと呼びます)を持つ多孔質結晶です。ケージ内に内包されている酸素イオン(O2-)を他の陰イオンや電子と置き換えることができます(電子で置き換えた物質をエレクトライドと呼びます)図1のように内包されている酸素イオンをフッ素イオン、もしくは電子に置き換えると、図2のように構造変化すると考えられます。

図1:ゲージ構造と置換

図2:エレクトライド化済みC12A7:F-のイメージ図

C12A7は、例えば酸化カルシウムとアルミナを規定のモル比で混ぜ、約1200℃で焼成することで得られます。フッ素置換はCaF2パウダーとC12A7と共に800℃で焼成、エレクトライド化はCa金属と共に真空下700~800℃で熱することによって行われます。

材料はカルシウムとアルミニウムの酸化物(セメント鉱物)であり材料費が安価である点、 白金代替触媒の生成に必要な装置・器具としては特殊なもの、高額なものがない点が本技術の特徴です。

◎エレクトライドの触媒性能
 様々なC12A7組成物を生成し、燃料電池の触媒機能を調査しました。まずカーボンペーパー上にC12A7組成物、カーボンブラックとナフィオン溶液から触媒層を形成し、電解質膜(ナフィオン膜)、白金触媒層からなるMEA(Membrane Electrode Assemblyの略)を作成し、完成した固体高分子形燃料電池の電流電圧特性をソースメータなどの測定装置で測定しました。

図3:固体高分子形燃料電池の構造

図4:横軸を電流密度,縦軸を電圧もしくは電力密度として表したグラフ

アノードにはC12A7エレクトライド、またはフッ素置換C12A7エレクトライドを用いた触媒層を、カソードには白金触媒層を用い、水素を流し測定しました。
C12A7エレクトライドは酸素イオンを電子で置き換えたサンプルですが、フッ素置換C12A7エレクトライドと比べると、同じエレクトライドではあるがフッ素イオンを内包している方が大きな発電量を示しました。

図5:ナフィオン膜の片面にC12A7:Cl-エレクトライド触媒層、もう一方の面を白金担持カーボン層に構成したMEA電気出力の時間経過の観測

 最初はほとんど発電しませんでしたが、希塩酸を少量C12A7側に注入すると出力が大きく増加しました。また、C12A7側をカソードにして(MEAを裏返して)しばらく発電をして後、元に戻すと発電量が大きく増加しました。さらに、直流電圧を印加し電気化学反応を誘起することにより、出力が増大することも確認することができました。

◎燃料電池の小型化に向けて
 C12A7新触媒は電子伝導、プロトン伝導の両性質を兼ね備え、空気極での触媒としても利用可能です。さらに、様々なカーボン素材に直接担持・活用でき燃料電池MEA作製法を大きく簡素化する可能性があり、燃料電池の小型化に期待がもてる技術です。

図6:考えられるMEAの構造

さらに、白金代替触媒の為、浄化システムや石油精製プロセスやアンモニアの製造、医療分野やセンサー応用への期待もできます。

※関連する発表論文・特許名称・出願番号等 ・WO-A-2021/010167 燃料電池触媒用組成物およびそれを含む燃料電池

【技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)】

・燃料電池の白金代替触媒として、同等程度の性能が期待できます。
・安価に簡易に生成できます。
・燃料電池については、燃料極(アノード)と空気極(カソード)のどちらにおいても触媒能力を有することができます。

【連携企業のイメージ】

・白金触媒を研究開発、製造している企業
・燃料電池MEAの研究開発、製造している企業(サンプルの提供が可能です) ・白金触媒を現在利用し、代替触媒を探索している企業

【技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)】

・本技術の実施許諾し、触媒の製造、販売を行う
・触媒の提供を受け、最適な燃料電池MEAの研究開発を行う
・浄化システムや石油精製プロセスやアンモニアの製造、医療分野やセンサー応用の為、触媒提供を受ける。

【技術・ノウハウの活用の流れ】

まずは、研究者とのご面談を調整させていただきます。
その上で、サンプル等の提供が可能です。

【専門用語の解説】

・白金
原子番号78の元素。元素記号はPt。白金族元素の一つでプラチナと呼ばれることもある。化学的に非常に安定性があるため、装飾品に多く利用される一方、触媒としても自動車の排気ガスの浄化をはじめ多方面で使用されている。
・MEA(Membrane Electrode Assembly)
触媒層と電解質膜とガス拡散層から成る、固体高分子型の燃料電池に使われる部材
・電子伝導
電場を印加された物質中の荷電粒子が、電場に導かれて移動する現象。電気伝導が起こることを、電流が流れるという。
・プロトン伝導
イオン伝導の一つ。外部電場を印加したときに、プロトン(H+:水素イオン)が伝導する現象

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