近年の情報社会の発展に伴い、大容量の情報を超高速に伝送する光通信技術が重要視されています。光通信分野には様々な先端的な光学部品が利用されており、光学部品内の配線あるいは光学部品間の配線において偏波保持光ファイバーと呼ばれるデバイスが大量に使用されています。偏波保持光ファイバーの製造技術は年々発展していますが、更なる低コスト化や高機能化が求められています。
本テーマでは、従来の原理と大幅に異なる、新しい偏波保持光ファイバーをご提案いたします。
[技術内容]
従来は、ガラス製のシングルモードファイバに対して複屈折を与えて偏波保持機能持たせています。コア径の制限があり、レンズを使用する必要があります。
本テーマは特殊な有機材料を使用しており、複屈折を消去しています。大口径化が可能でありレンズが不要です。また、対称軸を持たないため偏波面の調整が不要です。
[技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)]
1)優れた偏波保持特性を有しています。
(下記のとおり、市販2種と比較し複屈折が1/10~1/100程度です。)
2)大口径化が可能なため、レンズなど複雑な光学系が不要であり、低コスト化が可能です。
3)ガラス製シングルモードファイバに偏波保持機能を持たせる工程が不要です。
製造工程の簡略化、低コスト化が見込めます。
[連携企業のイメージ]
本技術の活用・実用化を希望する企業を歓迎します。
例えば、以下に該当する企業へご提案可能です。
1)偏波保持光ファイバーを開発している企業。
2)機能性光ファイバーを開発している企業。
※従来のシングルモード光ファイバーを用いた場合には、後に述べるように複雑な複屈折付与の加工工程が必要(主に海外メーカが市場シェアを占める)ですが、本提案では不要のため、国内の機能性光ファイバメーカの新事業展開に適しています。
3)高度なプラスチック成形製造技術を開発している企業。
※特殊なプラスチックをファイバー状に加工しているため、プラスチック成形技術にノウハウがあれば開発が可能です。
4)光学部品用の配線技術を開発している企業。
5)光通信分野で事業展開している企業。
6)他、本技術の実用化に興味がある企業。
[技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)]
光学部品の光配線用途に適用可能です。
(光配線に偏波保持ファイバーが必要な理由)
一般にシングルモード光ファイバーは円形の断面を持っているため、どのような偏光状態の光でも伝送できますが、これは光ファイバーの利点であると同時に欠点にもなります。光ファイバーを少しでも動かすと、内部の光の偏光状態が変わってしまうため、偏波モード分散 ( Polarization Mode Dispersion : PMD ) や偏波依存性を持つデバイス(例えば変調器など)との接続の不具合といった好ましくない影響が出てきます。そのために開発されたのが偏波保持ファイバー( Polarization Maintaining Fiber : PMF )であり、複屈折のランダムな揺らぎが光の偏光を大きく変えないように、デザインを工夫して意図的に大きな 複屈折を持つように設計されています。
(通常の偏波保持ファイバーの構造)
光ファイバーに複屈折を誘起する方法として、コアに非軸対称な応力を加えるものが挙げられます。応力付与型PMF と呼ばれ、PANDAファイバー、楕円ジャケットファイバーやボウタイファイバー、E-fiber、D-fiberなど様々な種類があります。
このような構造を作るためには高度なノウハウが必要となり、製造コストを要します。
また、偏波保持ファイバーはシングルクラッド/ダブルクラッドの大きく2種があり、主に海外メーカが国内では市場シェアの多くを占めています。
本提案では、偏波保持構造を作るための製造工程は不要です。また、優れた偏波保持特性を有するため、更に高機能な偏波保持光ファイバーが求められる分野に適しています。
[技術・ノウハウの活用の流れ]
試作品は既に開発済みです。お問い合わせ後、詳細にご説明させていただきます。
[専門用語の解説]
【光通信】
これまで通信に用いられてきた銅線や電波による通信に比べ、以下の特徴があります。
・大容量通信が可能。
・傍聴されにくく、通信の秘密保持が容易。
・電磁誘導ノイズの影響を受けない安定した通信が可能。
・レーザー光を使用した場合、高速かつ長距離の伝送が可能。