トップページ > 大学の技術・ノウハウ > 熱中症の予防・軽減新規成分(植物由来のフィトケミカル)の探索
資料 | |
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組織名 | 東洋大学 健康スポーツ科学部 栄養科学科 加藤 和則 教授 |
技術分野 | 医工連携/ライフサイエンス |
概要 |
熱中症の根本的な予防のために、血管内皮細胞の暑熱感受性および代謝経路に着目し、その暑熱ストレスによる細胞機能障害を軽減できる食品等に添加可能な植物由来の機能成分の検討を行いました。 具体的には、ヒト血管内皮細胞は38℃以上の環境下では細胞形態の変化、ATP量の減少、細胞障害の増加を確認することにより、暑熱ストレスによって脂肪酸代謝機能に障害がおこることを明らかにした。これらの評価系を基に、40℃の暑熱培養下のヒト血管内皮細胞へオーラプテン、タンゲレチン及びココナッツ等に含まれる中鎖脂肪酸等の植物由来の機能成分が脂肪酸代謝機能の促進や、熱耐性分子の発現誘導で暑熱耐性血管内皮細胞を誘導し、熱中症の予防や軽減の効果が期待できる事が明らかになった。 本技術を基に、今後も熱中症の予防や軽減の効果が期待できる成分の探索及び、発見した成分を応用した商品開発への期待ができます。 |
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簡略図
ヒト血管内皮細胞(HUVEC)を37℃及び40℃で培養すると、40℃で培養した細胞はATP量の減少を確認、さらに40℃で培養した細胞は1日後には形態変化(すなわち、細胞萎縮)が認められ、2日後には細胞増殖抑制、そして細胞死が観察されました。 ※ATP量は、ルシフェラーゼ発光法を使用して測定。細胞形態は、クリスタルバイオレット染色し、位相差顕微鏡下で撮影しました。 |
ヒト血管内皮細胞(HUVEC)をオーラプテン含有培地、タンゲレチン含有培地、でそれぞれ40℃、2日間培養液したとき、死細胞が減少し、生細胞が増加していることが観察されました。 |
背景
熱中症は、高温度・高湿度等の暑熱環境下に生体が長く曝されることで、体温や体液、循環の調整が破綻し、めまい・筋肉痛・頭痛・けいれん等の軽度の症状から、意識障害・失神などの重篤な症状まで生命の危機に至る疾患です。現在、地球規模の温暖化やヒートアイランド現象が原因で、日本では毎年10万人程度の熱中症による救急搬送患者と多数の死者も出し、毎年増加傾向であることから、深刻な社会問題となっています。
熱中症の予防には、脱水症状を改善することがまずは大切であり、補水とナトリウムイオンの供給が対処療法的に推奨されていますが、細胞・組織の暑熱ストレス応答の観点から発症メカニズムや対処法を検討している研究はこれまでありませんでした。
熱中症の根本的な予防のために、血管内皮細胞の暑熱感受性および代謝経路に着目し、その暑熱ストレスによる細胞機能障害を軽減できる食品等に添加可能な植物由来の機能成分の検討を行いました。
◎暑熱負荷による、血管内皮細胞への影響
以上のヒト血管内皮細胞による評価系を確立し、暑熱耐性を誘導できる機能成分の探索を行ったところ、オーラプテン、タンゲレチン、中鎖脂肪酸(その中でも、生体内で分解されて中鎖脂肪酸を形成する中鎖脂肪酸グリセリド、例えばMCT)にて暑熱耐性を誘導できる効果を確認しました。これらの成分を40℃の暑熱培養下のヒト血管内皮細胞へ各添加すると、以下の効果が確認できました。
・生存細胞の増加
・細胞内ATP量の増加
・脂肪酸代謝酵素PPARαの発現を亢進
・細胞内蓄積脂肪酸の代謝亢進
・熱対応メカニズムHsp70、HSF1の発現亢進
※関連する発表論文・特許名称・出願番号等
・特許第6557893号「熱中症の予防、軽減及び/又は治療のための組成物」
・「オーラプテン配合食品の摂取による高温多湿環境下での深部体温、血清浸透圧および暑さ体感に及ぼす影響の検討-ランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験-」薬理と治療 51(9), 1341-1353, 2023.
技術内容
熱中症の根本的な予防のために、血管内皮細胞の暑熱感受性および代謝経路に着目し、その暑熱ストレスによる細胞機能障害を軽減できる食品等に添加可能な植物由来の機能成分の検討を行いました。熱で血管内皮細胞が破壊されると、血管の細胞間に隙間ができて血液中の水分がどんどん漏れ出し、水分補給を行っても脱水症状を起こしてしまうリスクが高まります。今回、発見した成分がうまく活用できれば、熱のダメージから血管を保護しながら水分補給を行い、熱中症予防の効果がいっそう高まることが期待できます。
本技術を基に、今後も熱中症の予防や軽減の効果が期待できる成分の探索及び、発見した成分を応用した商品開発への期待ができます。
技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)
・植物由来の機能成分のため、食品等への添加が可能です。
・熱中症の根本的な予防のために、血管内皮細胞の評価系を確立しました。
・探索した成分は果皮にも含まれるため、未利用資源の活用に貢献できます。
連携企業のイメージ
・熱中症予防のための製品開発を検討している企業
・新たな熱中症予防効果のある成分の探索を希望する企業
・自社の製品、機能成分の熱中症効果を確認されたい企業
技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)
・本技術の実施許諾し、製品開発を行う
・植物成分等での新規機能性成分の探索を共同研究として行う
技術・ノウハウの活用の流れ
まずは、研究者とのご面談を調整させていただきます。
専門用語の解説
ATP(アデノシン三リン酸)
アデノシンという物質に3つのリン酸基(P)が結合しています。筋肉の収縮など生命活動で利用されるエネルギーの貯蔵・利用にかかわり、「生体のエネルギー通貨」と呼ばれます。
オーラプテン(Aurapten)
クマリン類に分類される化合物です。7-ゲラニルオキシクマリン、アウラプテンなどとも称され、下記の構造式を有する化合物です。カンキツ類の果実、特に夏蜜柑、はっさく、グレープフルーツ、ゆず、カボス等の果実の果皮に多く含まれています。
タンゲチレン(Tangeretin)
ポリメトキシフラボノイド化合物です。4’,5,6,7,8−ペンタメトキシフラボンとも称され、下記の構造式を有する化合物です。カンキツ類の果実、特にポンカン、シークワーサー等の果実に含まれています。
・中鎖脂肪酸:炭素数6〜12(中鎖)の脂肪酸です。
MCT
中鎖脂肪酸を主成分とするトリグリセリドオイルです。ココナッツオイル等に多く含まれます。
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