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パルス放電噴流床を用いた低炭素製錬法 -都市鉱石からのレアメタルの再資源化-

資料

パルス放電噴流床を用いた低炭素精錬法-都市鉱石からのレアメタルの再資源化-

組織名 法政大学 生命科学部 環境応用化学科 明石 孝也教授
技術分野 その他 , ものづくり , 新エネルギー/省エネルギー
概要

製造業の中で、最も二酸化炭素(CO2)を排出するとされているのが鉄鋼業です。特に、鉄の製錬では、コークスを使用して高温を維持し、鉄鉱石を還元して純粋な鉄を取り出します。この方法は、鉄鋼業などで広く利用されていますが、コークスを用いる製錬プロセスで多量のCO2を排出する点で、現在、脱炭素への取組として技術変換が求められています。
本技術は、粉状の鉱石を還元するために、熱源と還元剤としてのコークスを用いずに、還元ガスを流入させた噴流床内でパルス放電による加熱を行う手法です。これにより、鉱石の還元プロセスで排出するCO2を削減することが可能となります。また、本技術は都市鉱石(LED素子等)からのレアメタルの再資源化にも適用可能です。

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【簡略図】

【背景】

鉄鋼製錬における従来技術は焼結炉と高炉である。いずれの技術も、コークスを用いる製錬プロセスで多量のCO2を排出する点で、現在、脱炭素への取組として技術変換が求められています。

研究室ではこれまで、使用済みの廃電子部品や機械部品、いわゆる都市鉱石からレアメタルを分離・回収するための還元噴流床装置を開発し、使用済みLED照明からのガリウムの分離・回収と金の濃縮をターゲットとし、研究成果を出してきました。現在まで、自動車用排ガス触媒の廃棄物からのパラジウムの濃縮も視野において、還元噴流床装置の改良等の研究を行ってきました。今回、この還元噴流床式を、コークスを用いずに行う製錬プロセスに応用可能と考え、研究を開始しました。

更に、LED素子からの資源リサイクルに関する研究で還元噴流床装置の使用エネルギーを削減するという技術課題に対して、還元ガスを流入させた噴流床内でパルス放電による加熱を行う手法について検討を行いました。

【技術内容】

都市鉱石からレアメタルを分離・回収するための還元噴流床装置
LED素子中にGaNとして含有するガリウム成分を酸化ガリウムとして分離・回収するため、熱還元-酸化法を利用した噴流床式反応炉を用いた装置を開発しました。

図1:還元噴流床式の有価金属リサイクル装置

GaNから構成される廃LED素子からガリウムをGa2O(g)として分離するために、極微量の酸素を含む還元ガスを大量に供給する必要があります。本装置設計では、これを実現するために、噴流床式を採用しました。なお、この方式では,分離されたGa2O(g)は噴流床の上方で酸化され、ガリウムはGa2O3 (s)として回収されます。この装置を用いて廃LED素子から酸化ガリウムを分離・回収することに成功しました。この装置を用いた処理により、LED素子に含まれる金は焼成残渣として噴流床部で濃縮されます。なお、LED素子に含まれるGaNは酸に溶解しにいため、LED素子からのガリウム成分をリサイクルする場合、希少金属のリサイクルで一般的に用いられる湿式精錬の手法よりも、優位性があります。

パルス放電噴流床
本技術は噴流床内で粉末試料を直接加熱する事で例えば、粉状の鉱石を還元するために、熱源と還元剤としてのコークスを用いずに、還元ガスを流入させた噴流床内でパルス放電による加熱を行う手法です。
以下、装置の概略図のとおり試運転装置を製作し、パルス放電噴流床を用いて粉末状鉱石を還元できることを実証した結果、以下の研究成果を得る事ができました。
・220 Wで瞬間的に600~750 ℃にまで加熱可能
・噴流床内にて試料流動の促進、金属の球状化
・球状金属の沈降により、比重選別の可能性


図2:パルス放電噴流床の概略図と実験のようす

さらに、酸化スズ粉末を基にパルス放電噴流床を用いて、10 minで酸化スズ粉末を還元できることを実証しました。処理によって得られた金属スズは図3のように、粒状となり、酸化スズからの分離が可能となり、15 minの処理で最も多くの粒状生成物が回収されました。

図3:PDSB処理前後の酸化スズ粉末(処理時間10分)

現在、パルス放電噴流床を用いた粉鉱石(酸化鉄粉末)の還元を実証しており、処理後の酸化鉄が磁石に引き寄せられる事が確認できています。
さらに、装置についてはパルス電源の改造により220 Wから440 Wに出力を上げ、様々な鉱石の還元に適用するための検討を行っています。
本研究は、省エネルギーの熱還元処理技術として、各種鉱石の熱処理プロセスに貢献可能です。

【関連特許】
・金属化合物の濃縮方法(特許6192645)
・金属化合物濃縮装置(特開2017-119914)
・金属資源の乾式精錬方法及び乾式精錬装置(特願2023-203324)

【技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)】

・パルス放電により粉末試料を直接加熱、処理時間10~15分で粒状生成物を回収できるため、エネルギー消費量を削減できます。
・パルス放電により、酸化物は破砕されて微粉となり、金属は溶着して塊になるため広く応用が可能です。
・コークスを用いない金属製錬法であるため、CO2排出量削減に寄与します。

【連携企業のイメージ】

例えば下記の企業と連携可能です。
1)鉄鋼製錬における脱炭素や省エネルギーを実装した企業
2)非鉄金属メーカーで、銅やレアメタルの精錬とリサイクルに興味のある企業
3)「エコサイクル」プロジェクトを推進しており、使用済み製品や産業廃棄物からのレアメタル回収と再利用を検討されている企業
4)リサイクルや環境事業を展開されている企業
5)他、本技術の活用に意欲のある企業

【技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)】

・粉鉱石の還元
・都市鉱石からの貴金属の選別
・使用済みパワー半導体からの酸化ガリウムの破砕選別

【技術・ノウハウの活用の流れ】

鉱石(都市鉱石を含む)を提供して頂ければ、卓上装置にて熱還元処理を試すことが可能です。本技術の活用に興味がある方はお気軽にお問合せください。

【専門用語の解説】

・噴流床
容器底部の中心に空いた穴からガスを噴き上げ、容器内の粒を流動させながら反応させる反応装置。小麦を乾燥する方法として開発された。

・コークス
石炭を加熱処理した固体燃料。石炭を高温で加熱することで、水分や揮発性成分を除去し、炭素の含有量を高めたもの。

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