トップページ > 大学の技術・ノウハウ > ミトコンドリアを標的にした創薬開発(美容・健康)
資料 | |
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組織名 | 学習院大学 理学部 生命科学科 柳 茂 教授 |
技術分野 | 医工連携/ライフサイエンス |
概要 |
研究者らはミトコンドリアの機能を正常に保つ酵素(MITOL)を発見し、MITOLが加齢によって減少することが老化や老化に関連した様々な病気の原因の一つであることを明らかにしました。 |
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【簡略図】
【背景】
ミトコンドリアには、私たちが摂取した食物からエネルギーを取り出して、体内で利用することのできるエネルギー燃料であるATPに変換する働きがあります。また細胞周期やアポトーシスの調節などにも大きく関わっていることが知られています。ミトコンドリアの主要な役割は、先に説明した通り、エネルギー燃料であるATP合成ですが、これは酸素を必要とする化学反応であり、ミトコンドリアは副産物として活性酸素種であるROSを発生させます。
更に、加齢などによる酸化ストレスでミトコンドリアを分裂させる分裂遺伝子Drp1が蓄積すると、ミトコンドリアが断片化し機能不全を起こすことでROSを発生させる割合が大きくなってきます。
このミトコンドリアの機能不全や形態異常によるROSの大量発生は、皮膚の皺などに代表される老化や臓器疾患などの原因となっています。 しかしながら、ミトコンドリアが酸化ストレスにより機能不全や形態異常を引き起こすメカニズムは、分かっていませんでした。
【技術内容】
【MITOLは分裂因子rp1を分解する】
まず、究者らはMITOLと名付けた酵素が、加齢により蓄積する分裂因子Drp1を分解することを発見しました。
MITOLが加齢とともに減少し、Drp1が蓄積することでミトコンドリアの断片化を引き起こします。これにより、ミトコンドリアでエネルギーが作れなくなり、活性酸素が蓄積していくことがわかってきました。
【皮膚老化にもMITOLが影響を及ぼす】
以下は、マウスの皮膚でMITOLを欠損させた実験結果です。3ヶ月~半年あまりでマウスに白髪脱毛が起こりはじめ、β‐gal染色で青く変色した老化細胞を確認できました。また少しの紫外線の刺激により皺が大きく進むことが分かりました。
【MITOLによる細胞の若返り】
上記の研究結果からMITOLが老化現象に大きく関わっていることが分かりましたが、更に、老化した細胞においても、MITOLを発現させることでミトコンドリアが活性化し、細胞の若返り現象が起こることも分かってきました。
【MITOL発現誘導薬の開発】
研究者らは、これまでにMITOL誘導する生薬のひとつオウレンに含まれるベルベリンが鍵を握っていることを発見しています。このMITOL誘導薬は皺の形成を抑制するアンチエイジング効果が期待できます。
【技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)】
・ミトコンドリアを活性化させるための直接的起因物質であるMITOLの働きに起因する創薬開発を行うための知見、ノウハウを有すること。
【連携企業のイメージ】
・製薬会社
・美容サプリメントの開発会社、研究施設
・心臓など専門医療研究機関との連携
【技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)】
〇アンチエイジング効果に着目し、サプリメントや創薬の開発
〇ダイエット・肥満など、審美、健康目的とした褐色脂肪細胞の活性化を促すようなサプリメントや創薬の開発
〇老化防止に着目した循環器内科や神経疾患に関する創薬の開発
【技術・ノウハウの活用の流れ】
本研究にご興味があればお気軽にお問合せください。
詳しい研究紹介を含め、連携に向けご面談等のアレンジが可能です。
【専門用語の解説】
MITOL(ミトコンドリアユビキチンリガーゼ)
ミトコンドリア外膜上に存在する基質ユビキチン化酵素の一つ。多臓器内において、老化に伴い発現減少する。ミトコンドリア近傍のシグナル制御を担う。
Drp1
ミトコンドリア分裂に関与する因子のひとつ。
ATP(Adenosine Tri-Phosphate)
筋肉の収縮など生命活動で利用されるエネルギーの貯蔵・利用にかかわる分子。エネルギー通貨と呼ばれることもある。
ROS(活性酸素種)
反応性の高い酸素種のことを一般に活性酸素種と呼ぶ。生体内において生体高分子と反応し、分子レベルの生体酸化損傷を増加させ、様々な疾病や 老化亢進につながる。
Β⁻gal染色
細胞老化マーカーであるβガラクトシダーゼ(senescence-associated β-galactosidase, SA β-Gal)の染色により,細胞老化を検出する手法
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