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ポーラスマイクロチャンネルを用いた高効率相変化冷却

資料

ポーラスマイクロチャンネルを用いた高効率相変化冷却

組織名 国立大学法人 電気通信大学 大学院情報理工学研究科 大川 富雄 教授
技術分野 ものづくり
概要

電子機器の小型化・高性能化に伴う発熱密度の増大により、従来のフィンを用いた空冷に代わる高効率冷却技術が求められています。対策の一つとして、マイクロチャンネル(小口径流路)を用いた相変化冷却が提案されていますが、安定な冷却を達成するには至っていません。本提案では、ポーラス金属(多孔質体)を用いてマイクロチャンネルを構成することで、安定かつ高効率の除熱が実現できることを示しました。熱交換器へも応用可能です。本技術の活用・実用化に意欲的な企業を歓迎します。

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【簡略図】
ookawa_pontie.jpg
【背景】
近年の小型化・高性能化の要求を受けて、電子機器の発熱密度は増加の一途をたどっており、従来のフィンを用いた空冷よりも効率的な除熱技術が求められています。
対策として、マイクルチャンネル(小口径流路)を用いた相変化冷却法が考案されています。本方法では、小さな温度差で大量の熱を運ぶことができ、また広大な伝熱面を配置できるため、高効率除熱が期待できます。しかし、通常のマイクロチャンネルでは安定に冷却を継続する上で問題があり、高効率冷却は実現できていません。
 本テーマでは、ポーラス金属という多孔質体を用いて流路を構成することでこの課題を解決し、高性能の除熱手法を確立しました。

【技術内容】
高効率冷却を安定に行うため、ポーラス金属という多孔質体を流路とすることでマイクロチャンネルを構成し、除熱性能を実験的に調べました。

ookawa_zikkenzu.jpg1)冷却材である水を、ポンプでポーラスマイクロチャンネルに送ります。
2)水が流路を通過します。この過程で、ヒーターにより水を加熱(ヒーターを冷却)します。
3)ヒーターの発熱量を徐々に増加させると、あるところで効率的な冷却ができなくなり、ヒーター温度が急上昇します。これを最大除熱可能量として記録します。

下記の計測条件で実験を行いました。
1)入口温度:80℃、90℃の2種類
2)流路構成:通常流路、気孔径が異なる2種類のポーラス金属流路の計3種類
3)流速条件:3種類(0.1~0.3m/s)

ookawa_neturyuusoku.jpg縦軸のqは熱流束、横軸のGは質量流束と呼びます。縦軸の値が大きいほど除熱量が大きい、横軸の値が大きいほど流速が速いことを意味します。

上記のグラフから、下記2点が分かります。
1)ポーラス金属の流路は、通常の流路より熱流束の値(縦軸の値)が大きい
(=除熱量が大きい)。
2)質量流束を上げた場合(横軸の値)、ポーラス金属の流路は熱流束の値が向上しているが、通常の流路では熱流束の値はほとんど変化していない。
  (=ポーラス金属を用いた場合、流量を増やせば移動する熱量(冷却量)を増やすことが容易であり、様々な機器において最適な条件下で除熱することが可能)

【技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)】
電子機器の冷却技術に関する研究は盛んであり、従来はファンによる冷却が主流でしたが、近年はマイクロチャンネルを用いた冷却技術に関する研究も進められています。これは、電子機器の発熱密度が増大し、ファンによる冷却では十分な除熱量が得られない場合が出てきたためです。
しかし、マイクロチャンネルでは、流路を小さくすることで、除熱効率がかえって低下することも多く、問題となっていました。本研究室では、この問題の原因を追求し改善することで、従来の研究結果よりも非常に効率のよい除熱が可能なマイクロチャンネルを開発しました。

原因①
マイクロチャンネル流路内で冷却材が沸騰すると、除熱効率が格段に向上します。沸騰は、表面にある微細なキズ(キャビティ)が多いほど起こりやすいので、キャビティの数を増やして除熱効率を高くする必要がありました。ところが、通常のマイクロチャンネルの流路の壁面は滑らかなため、沸騰が起きにくい体系でした。

→本技術では、多孔質体であるポーラス金属をマイクロチャンネルの流路として用いることで、壁面を意図的に荒らし、沸騰を起こしやすくしています。

原因②
マイクロチャンネル内では、整然とした流れ場になっているため、沸騰のきっかけが得られにくくなっていました。 

→本技術では、①と同様にポーラス金属を用いることで、流れを意図的に乱す微細形状をつくり、沸騰を起こしやすくしています。

実際に実験をしたところ、以下の結果を得ることができました。

hikakuzu_ookawa.jpg表からわかる通り、通常のマイクロチャンネルよりも2倍の限界熱流束を示しています。したがって大川研究室で開発したマイクロチャンネルを用いることで、従来の問題を解決することができます。また、冷却材の流速や温度を最適化すれば、さらに高効率の冷却を行うことも可能です。高圧力条件にも適用可能です。

【連携企業のイメージ】
本技術の活用・実用化を希望する企業を歓迎します。
例えば、以下に該当する企業へご提案可能です。
1)CPUなどの各種電子機器の冷却に関連した研究、または機
器の開発している企業
(フィン、ヒートシンクなど)
2)熱交換器、マイクロヒートポンプの研究開発を行っている企業
3)小型冷凍空調機器の研究開発を行っている企業
4)ポーラス金属を製造しており、用途開拓を模索している企業
5)マイクロチャンネルの研究開発を行っている企業
6)多孔質や極微小亀裂内流れの研究をしている企業
7)マイクロ燃焼器の研究開発をしている企業

【技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)】
CPUなどの各種電子機器の冷却の他、熱交換器への応用として下記の展開可能性があります。
(1)熱交換器の小型化により、機器の配置や設計などに柔軟性が生まれ、システムとしての最適設計が容易になります。
(2)熱交換器の高効率化により、空冷用ファンなどの送風機動力を削減することが可能です。
(3)熱交換器としての高耐圧化が可能です。
(4)熱交換器を小型化することで、冷媒充填量を低減でき、環境負荷の低減が可能です。

具体例として、家庭用の二酸化炭素ヒートポンプ給湯機や次世代カーエアコン用の熱交換器などへ応用可能です。

【技術・ノウハウの活用の流れ】
試作品は既に確立しています。お問い合わせ後、デモンストレーションや技術の詳細説明などさせていただきます。

【専門用語の解説】
(相変化冷却)
熱の移動に冷媒の温度上昇を伴わない潜熱を利用する相変化冷却方式です。発熱体に設置した放熱器に大量の送風を行うことで冷却する「空冷式」や、冷媒の温度上昇が大きい「水冷式」に比べて小型かつ高効率で冷却(除熱)することが可能です。

(マイクロチャンネル)
微細加工技術などを使って加工した微細流路のことです。

(CHF(限界熱流束))
熱流束の上昇に伴い蒸気泡内の蒸気流の上昇速度が増します。これに従って気液界面の振幅が大きくなり、気泡下部液膜厚さの変動も増大します。 そして気泡下部液膜がほぼ乾いた状態になると熱流束が限界を迎えます。この時にCHFが生じます。

(潜熱と顕熱)
 高熱を発する受熱部を冷やす冷媒の温度を熱であげるのが顕熱といい、熱が冷媒を水から蒸気といった相変化に用いられるのが潜熱といいます。潜熱の場合、温度は変わらず状態が変化するだけのため、ファンによって温度を急激に冷やす必要性がなく省電力で冷却を行えます。
ookawa_zyonetu.jpg

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