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マイクロ波レーダとトモグラフィ技術による安全かつ低コストな乳がん簡易スクリーニング技術

資料

マイクロ波レーダとトモグラフィ技術による安全かつ低コストな乳がん簡易スクリーニング技術

組織名 国立大学法人電気通信大学 情報・通信工学専攻 木寺 正平 准教授
技術分野 医工連携/ライフサイエンス、IT
概要 乳がん検査にはX線マンモグラフィが利用されていますが、人体被爆や乳房圧迫による強い痛みを伴うため、受診率は15%程度に留まります。より頻度の高い簡易乳がんスクリーニング技術として、がん細胞の複素誘電率が正常細胞と異なる原理を利用したマイクロ波マンモグラフィ装置を研究しています.同画像化には、RPM(Range Points Migration)法と言う独自のレーダ技術とトモグラフィ技術を組合せ、また機械学習などを導入することで、高精度ながん検出法を開発しています。これにより1cm未満の初期状態のがん細胞の早期発見も期待されます。本研究を活用した製品開発に意欲がある企業を歓迎いたします。
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【簡略図】
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【背景】 
 

現在、女性の乳癌(にゅうがん)罹患率は約5~10%と非常に高く、簡易、高頻度かつ高精度な乳がん細胞検出技術が求められています。従来の検査技術として、X線によるマンモグラフィがありますが、被曝及び乳房が強く圧迫される等の身体的負担が大きく、受診率は15%程度に留まります。また、スクリーニング頻度も年に1回程度です。

 一方、数GHz程度の周波数を有するマイクロ波帯では、がん細胞の誘電率が正常細胞に対して有意に高いという原理を利用し、UWBレーダにRPM法と言う独自技術とトモグラフィ技術を組み合わせることにより、身体的負担が低く安価な乳がん検査装置を研究しています。安全かつ簡便な計測のため、より頻度の高いスクリーニングが可能となり、また数mm程度のごく初期状態のがん細胞の早期発見も期待されます。

本研究の臨床試験、実用化・普及に意欲がある医療機関や関連企業との連携を強く希望しております。

【技術内容】
 超広帯域のUWB帯を使用したレーダ計測技術を研究しています。

一般的なレーダと比較し、UWBパルスでは距離分解能が数cm~数mmと高いことが特徴です。例えば3GHz帯を使用した場合には距離分解能は空間では5cm,生体内では1cm程度になります。

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 レーダを用いた画像化技術では、従来手法として「合成開口レーダ(SAR)」という手法が用いられていました。本研究では新たに「RPM法(Range Points Migration)」という手法を研究しています。比帯域が100%のモノサイクルパルスを用いた場合、その中心波長に対して、精度が1/100波長と高精度化し、分解能が1/10と高分解能化し、計算の超高速処理を実現しています。


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「S. C. Hagness, and B. D. Van Veen, IEEE Transactionson Antennas and Propagation, 2003.」によれば、下記表のとおり、乳がん内のがん細胞はUWBレーダを用いて検出できることが発表されています。(下記表の左図は比誘電率分布であり、中央部の白丸ががん細胞。右図はUWBレーダによって画像化したものであり中央部のがん細胞部を強調して可視化できます。縦軸・横軸の単位はmm)

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 これは、以下2つの理由です。
1.がん細胞は正常細胞(脂肪組織)と比較して誘電率が非常に高いため。
(上記表は誘電率の違いをグラフ化しています)
2.1から10GHz帯のUWBマイクロ波は透過性が高いため、皮膚低深部まで検査可能。
RPM法を適用することで、処理時間を大幅に短縮化することができます。
一方最近の研究で,乳腺は比較的誘電率が高く,がん組織は乳腺組織に対して高々10~20%程度の誘電率の差しかないことがわかってきました。このため上記のレーダ的な手法や、RPM法のみではがん細胞の識別精度が十分ではないという課題がありました。
そこで、散乱データから直接的に複素誘電率を推定するトモグラフィ技術を組み合わせる、絶対的な誘電率値を抽出することにより、乳腺とがん組織の識別精度を改善する方法を検討しています。


20190408171920.png図は、実際の乳房のMRI画像から抽出された導電率と誘電率分布とトモグラフィ技術による再構成値を示しています。がん細胞は5mm程度の大きさですが、乳腺よりも高い組織として再現できていることがわかります。今後、レーダ技術による画像化を併用することで、更に高精度化できる見込みがあり、実用に足る装置として製品化が期待できます。 また簡易マイクロ波マンモグラフィ装置も有しており、臨床試験も可能な状態です。

【技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)】

 医療用乳がん検査装置としてX線マンモグラフィが利用されています。本技術の優位性は以下のとおりです。

□身体的負担が小さいこと。
 X線マンモグラフィはX線を当てるため、線量を押さえたとしても人体に被爆します。また、乳房に装置を押し当てるため強い痛みが発生します。
 本技術では、人体に触れず非侵襲で検査可能です。そのため痛みはありません。また携帯電話で使われている電磁波なので、人体への影響はほぼありません。このため、 1か月に一回程度のより高いスクリーニングが可能です。コストも通信用のアンテナやパルス発生器などで構成されるため、安価に済ませることができます。


□がんの早期発見が期待できること。
 前記の通り、本技術でがん細胞と乳腺組織を高い確度で識別できる可能性があるため、成長途上の小さながん細胞でも早期に発見することが期待できます。
 具体的には、X線マンモグラフィで観測可能ながん細胞は1㎝程度ですが、本技術では5mm程度でも観測することが可能です。また、がん細胞を観測するために感度を高めた場合には誤検知率が高まりますが(X線マンモグラフィの場合は検知率を99.9%とした場合に誤検知率は50%程度)、本技術では5mmのがん細胞を検知するに際して誤検知率を20%程度まで下げられることをシミュレーション上で確認しています。

□安価であること。
 X線マンモグラフィは非常に高価です。UWBレーダは高い周波数帯域を利用するため発振器の価格は他の無線用発振器と比較すれば高額ですが、X線マンモグラフィと比較すれば安価です。


【連携企業のイメージ】
 医療用検査機器メーカなど、本装置の事業化・普及に意欲がある企業を歓迎いたします。レーダに関するノウハウは研究室にあるため、企業側にレーダの知見が無くても連携可能です。

【技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)】
 乳房検査装置に活用可能です。身体表面の低深部であれば他の箇所のがん細胞検出にも応用可能です。また、誘電率の違いを応用した他の検査機器等にも応用可能です。

UWBレーダは高い距離分解能のほか、粉塵・暗闇・高濃度ガス・強い逆行等の環境下でも適用可能です。その特徴を生かして救助・資源探査ロボットセンサ等への適用可能性もあります。

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【技術・ノウハウの活用の流れ】

 本技術の活用にご興味があればお気軽にお問合せください。UWBレーダの装置デモや技術内容など詳しいご紹介をさせていただきます。

【専門用語】

(UWB(ウルトラワイドバンド))
無線通信の方式のひとつで、データを1GHz程度の極めて広い周波数帯に拡散して送受信を行う手法です。それぞれの周波数帯に送信されるデータはノイズ程度の強さしかないため、同じ周波数帯を使う無線機器と混信することがなく、消費電力も少ないことが特徴です。位置測定、レーダ、無線通信の3つの機能を合わせ持っており、独特な無線応用技術です。


(レーダ)
電波を対象物に向けて発射し、その反射波を測定することにより、対象物までの距離や方向を明らかにする装置です。遠くにある物との距離を電波によって計測し、図示することで航空機・船舶の位置把握や雨雲の雨量計測に、また物体の速度測定や障害物検知などのシステムに使われています。


(マンモグラフィ)
 乳がんを検査するX線装置です。線量が高いと人体に悪影響があるため、適当な線量(1Mev程度)で、高解像度かつ鮮明に検出することが求められています。
乳房を強く押し当てるため、強い痛みが発生します。また、医療用検査技術に関する他技術との比較は以下の通りです。

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