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歩行バランス機能の計測のための靴デバイス

資料

歩行バランス機能の計測のための靴デバイス

組織名 お茶の水女子大学基幹研究院自然科学系 生活工学共同専攻 太田 裕治 教授
技術分野 IT , ものづくり , 医工連携/ライフサイエンス
概要

高齢者の転倒は死亡事故や骨折につながりやすく寝たきり生活のきっかけにもなりかねません。転倒予防のためには、歩行バランス機能が重要であり、その計測が意味を持ちます。しかし、従来の歩行バランス機能の計測システムは大型なものやコストが掛かるものが多く、気軽に計測ができませんでした。本研究室で新たに開発した靴デバイスは、高齢者でも安全かつ手軽に計測ができます。履いたまま活動可能なので、医療はもちろん、様々な応用が期待できます。本技術を用いた応用製品の開発や事業展開に意欲がある企業を歓迎します。

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【簡略図】

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【背景】

 高齢者の4人に1人は毎年1度以上転倒すると言われており、転倒歴のある者は転倒を繰り返す傾向があります。これは、歩き方、特に歩行バランス機能に問題があるためです。
 転倒事故は、歩行バランス機能を計測して正しい歩き方を指導することである程度予防が可能です。このため、日常的に歩行バランス機能をチェックして正しい歩き方を目指す歩行訓練の意義が注目されています。
 従来、歩行バランス機能の計測は、被験者にトレッドミルや計測シート上を歩いてもらったり、多数の圧力センサを内蔵した靴を履いてもらって足底圧を測定して行っています。しかし、前者の方法は、計測装置が大型なため搬送・設置するのが手間であり、装置の設置場所以外では日常的に計測ができません。また、後者の方法は圧力センサからの信号線が多数出ており、高齢者では計測時に転倒を招きかねず、しかも、システムとして非常に高額なものでした。

 本研究室で新たに開発した靴デバイスは、足の構造を検討して圧力センサ数を低減したもので、ワイヤレス化により日常環境下でも安全に利用でき、かつ、システム全体としても比較的廉価なものです。

【技術内容】

 本研究室で新たに開発した靴デバイスは、以下の要素から構成されます。インソール(中敷き)、靴(無線器装着)、PC等のデータ処理・表示装置。

20180308153445.png インソールには圧力センサが装着されます。上の図は実験用のものであるため圧力センサが剥き出しになっていますが、製品ではインソールに埋め込まれます。圧力センサは従来の装置では数百個以上ありましたが、本製品では十個以下に低減されています。これは
・立位・歩行時の解剖学的荷重位置と
・足部アーチ構造
に着目し、計測点を大幅に低減したためです。もとより、計測点が多ければより詳細なデータが得られますが、歩行バランス機能の計測においてはそこまで多数の計測点は不要であるという足病学的知見に基づいています。具体的には下図のように①踵骨隆起部、②立方骨、③第五中骨頭、④拇指接地面、⑤第一中骨頭、⑥中間楔状骨及び⑦横足弓中心に対応する位置に圧力センサを配置します。
 歩行時の接地・離床には上記の①と④が関わり、体重支持には上記の①と③と➄が関わります。また、足部アーチ構造は上記の②と⑥と⑦が関わります。
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 なお、足部アーチ構造は、内側縦アーチ、外側縦アーチ及び横アーチから構成されています。
圧力センサの配置と対応する部位
20180308153541.png 上図の例では歩行バランス機能計測に特化した圧力センサ配置を取っていますが、用途に応じて配置を変えた製品も製造できます(後述の応用例参照)。
 インソールは足の大きさに合わせて数種類あり、被験者に合わせた製品を靴内に装入して計測を行うことができます。
 無線器や電源等は小型化可能であり、普段使いの靴に装着することもできます。また、データ処理・表示装置はスマートフォンを用い、アプリをインストールして無線器との間はbluetooth接続することが可能です。
 靴として履いた状態で計測できるため、計測は立位での計測、歩行時の計測のいずれも可能です。
   

                  歩行時の計測             

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                   立位での計測

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 歩行時の計測では被験者に十数歩程度を歩いてもらい、中間での歩行バランスを計測します。歩行バランス機能の良好な被験者では下図Aのように、かかとからつま先に大きく重心が移動するのに対し、歩行バランス機能の不良な被験者では、例えば、下図Bのように重心移動も荷重変化も少ない「よちよちした」歩き方になります。

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 立位の計測では足圧分布図を見ることも可能です。
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 このような計測結果は、即座に被験者に呈示して歩き方指導に役立てるほか、一定期間ごとのリポートとして示し、改善を心がけてもらうのにも有用です。
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 本研究室では介護施設や転倒予防教室等と連携し、既に高齢者1000名以上の計測実績を蓄積しています。こうした施設や教室では、自分のデータだけでなく他人のデータとの比較も行われ、訓練のモチベーションを維持する効果も得られています。

【技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)】

 本靴デバイスの利点は以下の通りです。

・従来の歩行バランス計測装置と比べて小型かつ安価である。
・文字通り靴型のため、日常環境下での歩行計測が可能である。
・データをスマートフォン等に送信することにより即時に結果を見ることができる。
・インソールに計測デバイス本体が内蔵されているため、普段使用する靴に装入して継続的に計測できる。
・高齢者の転倒予防のみならず、子どもに対する正しい歩き方指導やアスリート等のパフォーマンスの改善、女性の外反母趾対策等、歩き方に関する様々な問題の解消にも応用できる。

【連携企業のイメージ】

 例えば下記の企業と連携可能です。
1)病院、介護施設、リハビリ施設、転倒予防教室等、高齢者向けに転倒予防訓練を行っている施設
2)教育事業、健康事業、スポーツ産業(ジム)等に関する企業
3)製靴業や靴販売業等の履き物関連企業
4)その他、本技術の製品化・活用に意欲がある企業。


【技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)】

 上記では高齢者のための歩行バランス機能計測を中心に説明してきましたが、それ以外の応用も可能です。

【応用例:IoTデバイスとしてのサービス展開】
 例えば、成人女性の場合、
・足部異常で足が痛い
・足にフィットする靴選びに困る
という潜在的なニーズが存在します。そこで、本靴デバイスをIoT的に活用した下記のようなシステムが考えられます。
20180308153817.png これによる活用モデルは、例えば、以下のようなものです。図では携帯端末を介していますが、靴デバイスをIoT化することもできます。
20180308153835.png この場合、靴デバイスにおける無線器部分は靴のストラップやリボン、留め金等に取り付ける形式とし、インソールとともにいろいろな靴に履き替えることも可能です。

【技術・ノウハウの活用の流れ】
 
技術の活用や製品開発に興味がある方はお気軽にお問合せください。
デモを交えてご紹介させていただきます。

【専門用語の解説】

(足病学)
足病学は足のケア・治療に関する専門の診療・研究分野です。日本では足のトラブルに特化した医師は少ないですが、欧米では、形成外科、血管外科、皮膚科等、足に関する専門的知識を総合的に習得した足病医が多数います。

(足部アーチ構造)
体重を足底に分散し歩行に際して重要な働きを持つアーチ構造。内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチからなります。いわゆる「土踏まず」は内側縦アーチに相当します。外側縦アーチは内側縦アーチよりもアーチ高さは低いものの足のバランスを保つ上では重要です。内外の縦アーチを結んでいるのが横アーチです。

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