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複雑な流れ(高レイノルズ数流れ)を高精度に解析する新しい有限要素法による流体解析

資料

複雑な流れ(高レイノルズ数流れ)を高精度に解析する新しい有限要素法による流体解析

組織名 学習院大学 理学部数学科 内海 晋弥 助教
技術分野 ものづくり
概要

 物体の周りの水や空気の流れ(流体)を理解することは、理論研究だけでなく、防災や産業応用などの観点からも重要です。例えば近年では、コロナ禍における飛沫感染モデルといったように、特に実験が難しい場面などでは計算機によるシミュレーションが使われています。しかしながら、水のように粘性の小さい流体や、流速が早い場合は、流体が複雑な挙動を示すことが多く、シミュレーションの解も必ずしも正確な値になるとは限りません。
そこで本研究では、従来のシミュレーション手法に応用することで、流れの複雑さの指標となるレイノルズ数の高い(高レイノルズ数の)流体においても、高精度にシミュレーションの解を求める手法開発しました。

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【簡略図】

数値計算スキームによる流体解析の精度向上
Navier-Stokes方程式を用いた流体解析の弱点を克服
1.流速、圧力の高精度近似法
2.風上方向の情報に重きを置いた数値解法

【背景】
 有限要素法による流体のシミュレーションは、微分方程式の近似解を数値的に得る数値解析手法の一つで、汎用的なプログラムも作成できるため産業界で広く使われています。しかし、精度保証付きの数値計算の研究は進んでいますが、数学解析の理論を具体的な数値計算に即座に適用する研究にはまだ多くの課題があります。特に、複雑な流体の流れ(高レイノルズ数問題)においては、解の精度保証付き数値計算では、特定の流れについては高い精度を得ることはできていても、実際の産業における流れの問題では、最先端の計算機をもってしても正確なシミュレーションは困難です。そのため、本研究では、高レイノルズ数の流れを解析できる新たな有限要素法による流体解析法を開発しました。

【技術内容】
 本研究では、実際の産業での応用で想定される形状や、高レイノルズ数となる複雑な流れにおいて、高精度かつ高速に計算を行う有限要素法による流体解析法を開発しました。現在、一般で使用されている有限要素法による流体解析法には、ナヴィエ・ストークス方程式が用いられていますが、粘性が小さい流体や流速が速い条件下での解析の際には、高精度な結果を出すのは容易ではありません。そのため、本研究では、以下の2つの新手法を用いて、流体解析の高精度化を行いました。

【1.流速、圧力を高精度に近似する】
 流体解析の精度向上のためには、流速と圧力成分の近似を高精度に行う必要があります。通常は、図のような障害物(円柱)周りの流れを解析する際、流速の各成分にはより精密な2次多項式を適用し、圧力成分には1次多項式を適用して近似するのが(赤線)一般的です。そのため、近似が高精度に行えないため解析結果の精度にも大きく影響が出ていました。本手法では、流速と圧力のどちらにも2次多項式を適用しました(P2/P2、青線)。これにより近似解はより高精度な値となり、参照解(黒線)とほぼ一致させることができました。

障害物(円柱)周りの流れの解析例

【2.風上方向の情報に重きを置いた数値解法】
 また、流体解析を行う際に、解析対象の全体の情報を用いると解が振動しやすくなってしまう傾向があるため、流れの風上方向の情報に重きを置いて(時間方向の離散化〈Lagrange–Galerkin(特性曲線)法〉を用いて)解析しました。

 この手法は、移流拡散方程 式や Navier-Stokes 方程式のような流れ問題に対する有力な手法です。物質微分項を特 性曲線に沿って離散化することが特徴で、厳密に計算でき,かつ,収束性を証明できるため、高レイノルズ数に対してもロバストな手法です。だた、合成関数を含む積分の実装が問題点で、そこに数値積分公式が使われた場合、不安定になりうることが分かっていました。

Lagrange–Galerkin(特性曲線)法の従来法との比較

 本研究では、厳密に実装できる数値積分誤差を伴わない特性曲線有限要素スキームを構成し、安定な収束性を得ることができるようになりました。

【技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)】
・一般的に使われている有限要素法による流体解析を高精度化する研究です。
・高レイノルズ数となる乱流などの流体問題において、ナヴィエ・ストークス方程式を高度化し、解析を高精度に行うことができます。
・本研究では流体解析の精度を、数学的に解決することができます。

【連携企業のイメージ】
・流体有限要素法を用いる企業の研究所や大学・研究機関
・流体解析ソフトを扱う企業
・自動車関連企業
・空調機他ものづくり関連企業

【技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)】
・自動車や水路、パイプ、航空機の翼などのものづくりの高性能化に寄与します
・研究室に実際のものづくり現場の流体解析に関する課題を相談することができます。

【技術・ノウハウの活用の流れ】
本研究にご興味があればお気軽にお問合せください。
詳しい研究紹介を含め、連携に向けご面談等のアレンジが可能です。

【専門用語の解説】
・ナヴィエ・ストークス方程式:流体の運動を記述する偏微分方程式
・レイノルズ数:流体力学において慣性力と粘性力の比をとった無次元数
・有限要素法:構造物を複数の有限個の要素(メッシュ)に分割して数値解析を行う方法。

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