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基質投与量が少量でも6倍以上の高輝度化を実現! 近赤外発光680 nmイメージング材料『AkaSuke™』

資料

基質投与量が少量でも6倍以上の高輝度化を実現!近赤外発光680 nmイメージング材料『AkaSuke™』

組織名 国立大学法人 電気通信大学大学院 大学院情報理工学研究科 基盤理工学専攻 牧 昌次郎 教授/研究設備センター北田 昇雄特任助教 日本女子大学 理学部 化学生命科学科 森屋 亮平助教(開発当時 東京薬科大学 薬学部 嘱託助教)
技術分野 ナノテクノロジー , 医工連携/ライフサイエンス , 環境/有機化学/無機化学
概要

バイオイメージングは、細胞内の酵素などを発光物質(バイオプローブ)で光らせることで、非侵襲的かつリアルタイムに生体内現象を可視化・観察することが可能な技術として近年注目されています。特に、発光イメージングは生体深部の細胞や臓器を可視化できるため、がん治療、再生医療研究等、生命科学や医療技術開発をはじめとするライフサイエンス分野での期待は大きく、以下の技術が求められています。
1)高輝度であること、2)発光ピークが長波長(650nm~800nm:生体の窓領域)
本技術は、生体内深部可視化に適した近赤外発光特性と、生体投与時の水溶性特性の両立に加え、従来品と比較し、少量投与でも6倍以上の高輝度化を実現しました。

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【簡略図】

 

【背景】

近年、再生医療分野の研究は急速に発展していますが、研究基盤となる生体の深部の可視化技術については、まだまだ発展途上の段階にあります。生体の深部を観察することが容易ではない主な原因は、生体組織による光の吸収・散乱であり、現在の標識材料として主に使われている可視光領域では生体内での吸収・散乱が強く、十分な画像を得ることが困難です。一方、近赤外領域の光は吸収・散乱が少なく、生体組織に対して高い透過特性を有するため、標識材料に適していますが、生体深部をより高感度に検出するため、輝度向上が求められていました。

これまで、研究チームではホタルの発光メカニズムに関わる発光基質(ホタルルシフェリン)と発光酵素(ホタルルシフェラーゼ)の反応機構に着目し、可視光を網羅する発光材料の多色化を実現、中でも近赤外領域で発光する数多くのルシフェリン誘導体を有機合成することで、ホタル生物発光型の3種類の標識材料:『アカルミネ®』と『TokeOni』、『seMpai』を開発、黒金化成株式会社より製造・販売してまいりました。特に、『TokeOni』は理化学研究所 脳科学総合研究センターとの共同研究により、脳の深部を非侵襲的に観察できる人工生物発光システム『AkaBLI』の開発に成功いたしました。

【技術内容】

ホタル由来の発光基質であるルシフェリン(D-luciferin)は、発光酵素ルシフェラーゼ(Fluc)と化学反応することで黄色く光ります。この反応は、すでに世界中で生化学研究等に広く使われています。ホタル以外では、オワンクラゲやウミホタルなどの蛍光・発光物質も用いられていますが、一般に 天然の発光色で使われており、人工材料化されていませんでした。

そのため世界中では、より明るく光る発光システムを持つ生物種の探索、既存システムのFluc遺伝子を改変してより明るく光る人工生物発光システムを開発する研究、ならびにD-luciferinを改変して発光する色を変化させる研究が盛んに行われています。

本技術は、『アカルミネ®』および『TokeOni』、『seMpai』の開発で蓄積した知見を基に、天然酵素Flucによる高輝度化を実現し、『AkaSuke™』(以下、AkaSuke)と名称しました。

○近赤外発光680 nm のルシフェリンアナログによる高輝度化を実現

○D-ルシフェリンと比較し、少ない投与量でも6倍以上の高感度にイメージングが可能

AkaSukeは、皮下腫瘍の発光イメージと、腫瘍からの発光強度の定量解析の結果、図1のように、D-ルシフェリンと比較し、発光強度を約6倍向上させることに成功しました。この時のAkaSukeの投与量はD-ルシフェリンの1/3程度にも関わらず、D-ルシフェリン使用時よりも高感度にイメージングできました。

 

図1は、実験用マウス(B6 albino)にホタルルシフェラーゼ(Venus-Fluc)を遺伝子導入した乳がん細胞E0771を尾静脈移植後、9日目の測定結果です。腹腔内投与にてD-ルシフェリン投与後6時間後にAkaSukeを投与しました画像と、その際の輝度発光信号を比較したグラフです。

基質の投与量は、D-ルシフェリン:10μmol/body、AkaSuke:3μmol/bodyであることから、AkaSukeがD-ルシフェリンより少量でかつ高感度にイメージングできることがわかります。(左)従来のD-luciferin (右)今回開発したAkaSuke

上記の結果は、自治医科大学 分子病態治療研究センター 循環病態・代謝学研究部 口丸高弘准教授との共同研究の結果です。
現在、AkaSukeのアプリケーションとしての性能を他機関の研究者と連携し検討中です。

本技術は、東京薬科大学と電気通信大学にて特許出願を行っております。
「新規複素環式化合物及びその塩、並びに、発光基質組成物」(JP7255828B, US11807612B2)

【技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)】

ホタル生物発光で680nmの長波長発光を実現し、天然酵素Flucによる高輝度化を実現し、D-ルシフェリンと比較し、発光強度を約6倍向上させることに成功。
また、少ない投与量でも高輝度化を実現。

・D-luciferinを改変して多色化(RGB)の基質ライブラリを保有しているため、バリエーションのある生体イメージングが可能。
また、有機合成の研究室が開発した発光基質のため、ニーズに合わせて新たなバイオプローブの開発が可能。

【連携企業のイメージ】

本技術の活用に意欲がある企業を歓迎いたします。
例えば、以下の企業へご提案が可能です。

1)ミニブタ・コモンマーモセット・サルなど中型動物に対するインビボイメージングを行いたい企業/研究所

2)脳・肺など表皮から深い部位をイメージングしたい企業/研究所

3)長波長発光バイオプローブの活用を希望する医薬品メーカー/研究所

4)その他、生物発光について技術課題がある企業。

【技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)】

・バイオプローブとして(腫瘍)治療、再生医療研究(iPS細胞への適用)等、医療技術開発など幅広い用途に活用可能です。
例えば下記の手順で、がん遺伝子の転移現象や治療による生体反応の解析などに活用可能です。

1)ホタルの発光酵素遺伝子(ホタルルシフェラーゼ)を「培養したがん細胞」に組み込んだうえで、マウスなどの実験動物に移植し、担がんモデル動物を作製する。

2)長波長バイオプローブを体外から投与すると、がん細胞内でのみ酵素と基質の化学反応がおき、長波長の発光(赤色)が発生する。

3)発光現象をイメージング装置などで観察する。

※長波長の赤い光は人間の目には見えませんが、実験用測定装置であれば観察可能です。また、生きたまま何日でも観察可能なので、がんがどのように発生し、成長し、転移していくのか、といったことを細胞レベルで追うことが可能になります。

・さらに、基質をカスタマイズすることによって、RGBにわたる幅広い波長帯に対して(=マルチカラー)発光させることが可能です。

【技術・ノウハウの活用の流れ】

お問合せ後、技術面談にて詳しい技術内容をご説明させていただきます。

また、サンプル提供が可能ですので、併せてお問い合わせください。本テーマに限らず、生物発光や、有機合成に関する様々な技術相談にも対応可能です。

【専門用語の解説】

【バイオプローブ】

標識材料とも呼ばれています。生体機能を解析するために有用な低分子有機化合物を指します。バイオプローブにより、細胞内の遺伝子発現を可視化するなど、ライフサイエンス研究において有用な知見を得ることが可能です。

【ホタルの発光原理】

ホタルの発光は発光基質(ルシフェリン)に発光酵素(ルシフェラーゼ)が作用し、空気中の酸素を使って酸化反応することで発光します。生物発光のエネルギー変換効率の高さから、世界中で研究が進められていますが、多くはルシフェラーゼに関する研究です。牧先生は、発光基質自体を人工的に合成していることにノウハウと新規性があります。なお、ホタルの発光は2段階のプロセスを経て行われます。

【in vivo】

“生きた生体内で(の)”という意味で、マウス等の実験動物を用い、生体内に直接被験物質を投与し、生体内や細胞内での薬物の反応を検出する際などに用います。試験管内で実験するのではなく、生きた動物や細胞を用いて実験する際に、条件を明確にするために用いる用語です。

 

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