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タンパク質の結晶構造解析を容易にする結晶化したサンプルのハイドロゲルによる保護手法

資料

タンパク質の結晶構造解析を容易にする結晶化したサンプルのハイドロゲルによる保護手法

組織名 学習院大学 理学部生命科学科 助教 友池史明
技術分野 医工連携/ライフサイエンス
概要

 タンパク質の結晶構造解析はタンパク質の立体構造を明らかにする手法であり、基質や阻害剤との相互作用が観察できることから、創薬を含めた広い分野で利用されています。しかし、タンパク質結晶は物理的な衝撃に弱く、構造決定の際に壊れやすい課題があります。そのため、近年、ハイドロゲル中で結晶化させて結晶を保護する方法が開発されていますが、この方法は結晶化の条件を再検討する必要があり、さらに結晶を取り出すのが困難であるという欠点があります。そこで本研究では、タンパク質の結晶化後にハイドロゲルで包んで保護する新たな手法を開発しました。従来よりも幅広い条件でタンパク質を結晶化できるうえ、結晶を保護することで衝撃から守れるため、結晶の輸送やハンドリングが容易になり、創薬におけるスクリーニングなどを加速できると考えられます。

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【簡略図】

図1.タンパク質結晶の保護方法
図2.タンパク質結晶が保護されている様子

【背景】
 タンパク質の結晶構造解析には、X線結晶構造解析や核磁気共鳴(NMR)装置による解析、電子顕微鏡による解析などいくつかの方法があります。例えば、X線結晶構造解析は最近では1Å以下の高い分解能での解析が可能になっており、タンパク質と基質や阻害剤との詳細な相互作用を明らかにすることによって、新たな創薬につながると期待されています。タンパク質結晶の構造解析をよりスムーズにするために、1990年ごろからゲル中でタンパク質を結晶化させて衝撃から保護するという研究がされ始めましたが、ゲル中では条件が変わってしまうため結晶化のハードルが高く、また結晶が扱いにくくなることも指摘されていました。
 本研究では、従来の条件のままタンパク質を結晶化し、その上でゲル中で保護することで、持ち運び易く、扱い易いゲル保護に成功しました。結晶はゲル中からすぐに取り出せるため、さまざまな阻害剤や薬剤に浸すことで複合材の構造などをたやすく決定することができます。

【技術内容】
 カルシウムイオンと結合してハイドロゲルを形成する、(『つかめる水』などとして市販されている)アルギン酸ナトリウムを用い、カウンターディフュージョン法を使ってキャピラリー中で結晶化します。例えば、リゾチームを標的として、アルギン酸ナトリウム存在下で結晶を生成し、射出した結晶を切り出してカルシウム溶液に混合します。すると、アルギン酸ゲルに包まれたファイバー状のリゾチーム結晶が得られます。射出の際の流速条件は一定にする必要がないため、誰にでも簡単に保護できるのが特徴です。また、結晶化後に保護することで、従来よりも多様な条件でゲル化することができます。保護した結晶を純水に浸したところ、アルギン酸のゲル中に結晶の形の空洞ができたことから、結晶の内部にはアルギン酸は染みこんでいないことが分かりました。ゲルで保護した結晶は、保護していない結晶と同じように、溶液に浸すことで複合体を形成するソーキング法に適用できることも確認しています。さらに、保護した結晶を用いてX線結晶構造解析を行い、ゲルの存在が構造の決定に大きな影響を与えないことも実証しました。

図3.タンパク質の結晶化と保護(ゲル化)の工程

【技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)】
・従来の結晶化条件のままタンパク質結晶をゲルで簡単に保護できます
・タンパク質結晶をゲルで守ることで結晶構造解析の円滑な実施が可能です
・ゲル化により結晶が扱い易くなるため、創薬過程の自動化・機械化などが期待できます

【連携企業のイメージ】
・創薬関連の企業
・分析装置関連の企業
・タンパク質結晶化解析のスクリーニング関連技術を持つ企業
・試薬関連の企業

【技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)】
・タンパク質結晶のゲル化により、輸送やハンドリングが容易になります
・結晶を取り出し、阻害剤や薬剤に浸すことで複合材の構造決定を効率化できます
・創薬におけるスクリーニングなどを加速できると期待されます

【技術・ノウハウの活用の流れ】
本研究にご興味があればお気軽にお問合せください。
詳しい研究紹介を含め、連携に向けご面談等のアレンジが可能です。

【専門用語の解説】
ハイドロゲル:高分子などの固体が水を吸い込んで膨潤し、流動性がない形態(ゲルとなった物質の総称)

カウンターディフュージョン法:キャピラリー中のタンパク質結晶と結晶化のための試薬を相互に拡散させる結晶化手法

キャピラリー:細い管のこと

ソーキング法:タンパク質結晶を溶液に浸して複合体を形成する手法

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