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開放特許

高分子収着剤による電気自動車(EV)向け防曇・空調システムの省電力化

資料

高分子収着剤による電気自動車(EV)向け防曇・空調システムの省電力化

組織名 岡山大学 研究推進産学官連携機構 渡邊 裕 教授
技術分野 環境/有機化学/無機化学
概要

EVの普及が期待されていますが、一方で限られた電力を無駄なく利用することが求められています。EV室内の空調では特に冬季において安全性と快適性の確保から防曇が必要ですが、現行では冷凍機による冷却除湿後の加温等で多くの電力を要します。本研究では、室温でも利用できる水分子の収着・脱着ができメンテナンス性・使い勝手・量産性に優れる低コストの高分子収着剤を利用する空調デバイスを開発しました。ユニット化や空調システム組込みにより、EV室内環境を快適にし、かつ省電力化が期待できます。本技術の製品化・活用に意欲がある企業を歓迎します。

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簡略図

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背景

市販のEVでは冬季暖房や窓の曇り除去に車載バッテリーからの電力で製造した温水ならびに冷凍機による低温除湿を使用しています。このため、冬季の連続走行可能距離が縮減してしまうほか、寒冷時の暖房機能低下などの使い勝手の悪さが課題となっており、省電力で快適な車内環境の実現が期待されています。
そこで我々は、水分子の収着・脱着機能に優れ、低コストの高分子収着剤を使用し、EV車内の除湿を電力をほとんど使用せず実現できるユニットを開発しました。ユニットをあと付けで利用する、あるいはEVの空調システムの組込ユニットとして利用するなど、いずれの用途にも適用可能です。
本技術の製品化・活用を希望する企業を歓迎します。

技術内容

吸湿材として「収着」「脱着」ができる高分子収着剤を活用します。この高分子収着剤をユニットとして用いてEV車内の曇り除去・除湿が実現できます。
EV車内での利用方法として、湿った空気を高分子収着剤ユニット内部に流すと、
高分子収着剤表面で空気中の水蒸気を収着し、膨張するとともに発熱します。ユニット通過後の空気は乾いており、車内の湿度を下げることができます。その乾いた空気を窓ガラスに当てると、曇り除去に役立ちます。
一方、乾いた空気を流すと、高分子収着剤に収着していた水蒸気が脱着(再生)し、吸熱しつつ収縮します。ユニット通過後の空気は湿っていますので車外へ排気します。

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下図は高分子収着剤の吸放湿原理のイメージ図です。表面の親水性収着サイトが空気中の水蒸気を捕獲した後、水分子を樹脂内部に移送する結果、収着で樹脂は膨潤(体積膨張)します。低相対湿度の空気に接すると、樹脂内部の水は膨潤した樹脂から勢いよく空気中に飛び出します(引用図は、岡山大学 堀部教授作成)。

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この作用により、車内の湿度を一定範囲に保つことができます。搭乗者一人当たりの水分放出量は最大で毎時50g程度ですが、相対湿度70%の空気からの高分子収着剤が吸湿できる量は約70g/ℓ ですので数リットルのブロックを保有するユニットにより4-5名の搭乗者条件でも1~2時間の防曇が可能となります。またこれまで低温域(室温を含む)で再生できる実用材料はほとんどありませんでしたが、本材料は実用レベルにありますので、再生運転を行うことでブロック容量を削減しても連続した防曇が可能となります。
収着・脱着現象自体に電気は不要なため、収着剤ユニット内部へ空気を吸い込むだけの少しの電力だけで運用できます。収着剤は下記のように粉末状、繊維状、ハニカムブロック状などありますので、用途に応じて形状は変えられます。

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技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)

1)開発した高分子収着剤は安価で安全な素材で出来ており、ユニットの量産も容易です。そのため、EVの低消費電力化を低コストで行うことができます。

2)既存のEVにあと付けで利用することが可能です。また、EVの空調システムと組み合わせた開発を行うことで、更なる低消費電力化や暖冷房利用などへ応用することも可能です。

3)80℃~室温レベルでの低温再生(室温を含む)が可能です。
また、低温再生で問題となっていた下記の課題を解決しています。
  -抗菌性、抗カビ性を有しており悪臭発生を抑えています。
  -水分子以外の収着はないので、臭い成分の蓄積は発生しません。

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4)柔軟な高分子構造のため、耐久性に優れ、長期利用可能・メンテナンスフリーです。
(EV利用ではフィルター同様に消耗品として定期交換による部品販売を推奨)

以上をまとめると既存材料との対比は下記のレーダーチャートとなります。

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なお、下記は横軸に相対湿度、縦軸に吸湿率(吸湿された水分重量と材料重量の比率)をとり、一定温度(データは20℃)条件での計測結果をグラフ化したものですが、高分子収着剤は既存の吸湿材に比べて高い収着性能を保っていることが判ります。特に夏場では高相対湿度の環境は人にとって不快となりますが、本材料によって収着することで室温でも心地よい湿度に保つことができます。

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例えば、800mm×800mm×500mmの積層ブロックを用いた吸湿量計測実験では、14L程度の水を吸湿できましたので、ブロック1リットルあたり44gの水を吸湿したことになります。ブロックにせずとも薄いフィルター状でも同様の効果を発揮します。

連携企業のイメージ

例えば下記の企業と連携可能です。
1)カー用品の製造・販売メーカー
2)EV向けカーエアコンの研究開発を行っている企業
3)EV開発および製造を行っている企業
4)その他、本技術の活用に関心がある企業

技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)

EVの防曇・空調、快適性ならびに使い勝手の改善用途として活用可能です。
先ずは市販EVを用いての簡易実験による消費電力測定結果を紹介します。
一周19.2kmの上り下りを含む一般道路で、空調条件を3通りに変えて走行時消費電力を計測しました。(条件は①空調オフ、②室温25℃とした暖房、③室温を25℃としてデフォッグ運転の3通り)
 空調オフ条件では7.38kW、条件②では9.51kW、条件③では11.33kWの電力負荷が発生しました。条件③では低湿・低温の外気を導入したため外気の加熱量が増大し、電力負荷が条件①に比して50%以上増加しています。条件②では室内空気の循環+加温ですので電力負荷は約30%増でした。空気の加温は電気ヒーターによるものと思われますので、エアコン利用であれば電力消費量は改善される可能性があります。

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【高分子収着剤ユニットを車内に設置した際の防曇効果事例】
 次に高分子収着剤ユニット作動時の窓ガラスの曇り状況の変化を示します。
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【空調システムに組み込む場合】
EV向けの空調システムに収着剤ユニットを搭載するときのシステム図は下記となります。
 圧縮機、蒸発器、凝縮器、膨張器からなるヒートポンプの蒸発器と凝縮器の間に高分子収着剤ブロックを設置し、蒸発器で相対湿度が100%程度まで上昇した空気から高分子収着剤が吸湿を行います。その結果、温度上昇した空気は次の凝縮器を通過する際に、蒸発器で自身が放出した熱量とヒートポンプサイクルで圧縮機が行った仕事量に相当する熱量を受領して、低湿度で高温の空気として車内へ還流します。

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車内空気(24℃,12.5g/kg)を蒸発器で約16℃に冷却した後、収着剤ブロックを通すと約21℃、9.5g/kgになり、凝縮器では蒸発器での放熱量と圧縮機仕事相当の熱量を受け、約39℃、9.5g/kg、相対湿度25%となります。この空気は暖房および防曇に活用可能です。

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現行EVとの対比で、特に冬季においては防曇・暖房に消費される電力使用量の25%程度の削減が見込まれます。また、夏季・中間期を含めて通年で快適な車内環境形成と、空調に消費される電力使用量の年間推定総量で10%程度の削減が見込まれます。

技術・ノウハウの活用の流れ

本技術の活用や製品開発に興味がある方はお気軽にお問合せください。
高分子収着剤の実物および実データを交えてご紹介させていただきます。

専門用語の解説

【相対湿度】
 その気温の空気が水分を保有できる最大量に対してどれだけの水分があるかどうかを割合で表現したもので、パーセントで示されます。

【収着/脱着】
高分子樹脂表面へ水蒸気が拘束される現象は、通常の吸着現象とは呼ばず、収着現象と呼ばれます。拘束した水蒸気を高分子樹脂表面から外す現象を脱着と呼び、繰り返してもほとんど劣化しません。

【再生】
乾燥された空気によって収着剤が水分を放出する現象を指します。

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