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生体適合性材料表面等への微細周期構造(リンクル)の形成

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生体適合性材料表面等への微細周期構造(リンクル)の形成

組織名 鳥取大学大学院工学研究科 化学・生物応用工学専攻 井澤 浩則 助教
技術分野 医工連携/ライフサイエンス、環境/有機化学/無機化学
概要  自然界では、動植物表面等に微細な周期的凹凸構造(しわ・リンクル)があります。リンクル構造は、構造的に興味深いだけでなく、細胞培養足場、生体材料等としても大きな可能性を秘めています。本研究室では、シンプルな手順で有機材料、特に生体適合性材料表面にリンクル構造を形成することに成功しました。リンクル構造の制御も可能です。炭化して特異な表面を有する炭素材料にも転換できます。本構造材料に関心のある医療関係その他の企業・研究機関等との連携・相談を歓迎します。
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【簡略図】

20180702145823.png

【背景】

 一般にリンクルは、柔らかい基板の表面に硬い表層(スキン層)を設け、応力を作用させて形成します。
20180702145941.png

 例えば、下図のようにポリジメチルシロキサンフィルムに引っ張り応力を加えて歪みを与えた後、表面を光硬化してスキン層を形成し、最後に応力解放することで表面にリンクルが形成できます。光硬化のほか、化学蒸着や光架橋等の方法もあります。

20180702150048.png しかし、このような方法では
・適用可能な基板材料や形成されるスキン層の性質が限られる
・応力の制御やスキン層形成に特殊な機器が必要である
等の問題がありました。

【技術内容】

 本研究室では、従来のドライプロセスとは全く異なる原理により、リンクルを形成することに成功しました。複数の方法が開発されており、第1法は以下の手順によるものです。
[第1法]
①まず、キトサン(CS: Chitosan)フィルムをフェノール酸(PH)のメタノール溶液に浸漬します。ここで、キトサンとはポリ-β1→4-グルコサミン(すなわち、グルコサミンの直鎖型1,4-重合物)で、分子量は数千から数十万に及ぶ高分子です。なお、グルコサミンは、下記の構造式で示されるように、グルコース単位の2位の位置にある水酸基がアミノ基に置換されたアミノ糖です。
20180702150211.png 一方、フェノール酸とは、下記の一般式で示される物質で、フェルラ酸(FE)、カフェ酸(CA)等です。
20180702150454.png20180702150620.png②次に、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)と過酸化水素を作用させることでスキン層を形成します。
③最後にこれを乾燥させることで表面にリンクルを有するキトサンフィルムが形成されます。
 この方法によるリンクルのSEM写真を下図に示します。この方法では、浸漬するフェノール酸の種類と浸漬温度によりリンクルの周期等が制御可能です。

20180702150714.png[第2法]
 第2法は、第1法の結果から、イオン架橋後に乾燥することにより、リンクルが形成できるのではないかとの発想によるものです。
 具体的には以下の手順による方法です。
①まず、キトサン(CS)フィルムをアルギン酸(AG)水溶液に浸漬します。次いで、②洗浄して余分なAGを除去し、③乾燥したところ、予想通りリンクルが形成できました。
20180702150817.png なお、ベースとなるキトサンの分子量とリンクル形成について検討した結果、下記のように分子量の大きなキトサンフィルムでは膨潤度が小さくリンクルも形成されないことがわかりました。つまり、リンクル形成にはAGのCSフィルムへの浸入が不可欠であることがわかります。
20180702150925.png AG溶液への浸漬の場合も、第1法と同様に、浸漬温度によりリンクルの大きさが制御可能です。
20180702151046.png[耐水化]
 生体適合性材料によるリンクルは繊維芽細胞等の細胞培養足場に利用可能であることがわかっています。但し、この場合は、リンクルを耐水化する必要があります。本研究室の検討により、減圧下での加熱が耐水化方法として有効であることが判明しました。これはイオン架橋部が脱水縮合して共有結合(アミド、エステル)に転化することによるものと考えられます。
20180702151144.png 下図に示すように脱水縮合による共有結合架橋で耐水性が得られていることがわかります。
20180702151233.png

【技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性) 

 本研究室によるリンクル形成方法の優位性としては以下の点が挙げられます。
・生体適合材料をベースとしているため細胞培養足場や創傷医療材料として利用できる。
・浸漬、乾燥といったシンプルな操作のみでミクロン/サブミクロンオーダーのリンクル構造が形成でき、繊維芽細胞等の培養に有用である。
・外部から応力を掛けることなくリンクルが形成できるため、応力の制御が不要であり、ベース材料全体にわたって均一なリンクルが形成できる。
・浸漬材料、温度等の制御の容易な操作条件でリンクルの周期等を制御できる。
・リンクルの耐水化も容易である。
・炭化処理を行えばリンクル構造を維持したまま炭素材料に転換できる。
・鳥取大学ではキトサン技術についてもサポートしているため、材料を総合的に入手可能である

【連携企業のイメージ】

例えば下記の企業等と連携可能です。
1)再生医療・創傷治療等に関与する医療材料メーカー
2)細胞培養足場・接着材料を探している企業
3)微細周期構造に応用可能なアイデアを有する企業
4)表面微細周期構造を有する炭素材料に応用可能なアイデアを有する企業。

【技術・ノウハウの活用シーン(イメージ) 

 本研究室の生体適合性リンクルは、シンプルな方法で容易に製造でき、しかも、リンクル周期等の制御が可能であるため再生医療等の医療材料、細胞培養足場等としての活用が期待できます。

【技術・ノウハウの活用の流れ 
本技術の活用に興味がある方はお気軽にお問合せください。

【専門用語の解説】

(キトサン)

 カニやエビの殻に含まれるキチンを濃アルカリ中での煮沸処理等により脱アセチル化して得ることができます。フィルム等として利用可能であり、生体適合性が高く、化学処理により様々な機能を付与することも可能です。

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